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1. 薬漬けの輸入食品は ・後手に回るチェック機関 ・ポストハーベスト ・日本と外国の規制の違い ・日本についてから ・チェルノブイリが招いた ・加害者は誰? ・農薬から身を守る |
取材/文 原プロジェクト
輸入食品のずさんな管理 -港ではまるで廃棄物のような扱い-
★食べ物がなぜ野ざらしに・・・・・ 日本の輸入農産物の約3分の1が荷揚げされる横浜港。その横浜港では、たくさんの農産物が野積みされ、業者に引き取られるのを待っていた。 その状態は、惨憺たるもの。墓石となる原石の横に放置されていたり、外側の木製の箱が朽ちて内側のビニール袋が露出しているものもかなりある。まるで廃棄物が捨てられているかのようだ。もちろんこれらは立派な商品で、食品メーカーが引き取り、私たちの食卓を飾ることとなる。 港湾関係者の話では、1年程度の野積みはまだいい方で、中には数年にも及ぶものもあるという。どんなに長期間風雨にさらされたとしても、何のチェックも必要ではない。水際の検査で合格しているものが、こうして積まれているからだ。何か釈然としないものを感じる。 なぜこのような野積みの状態で何年も放置されているのだろうか。その要因は、なんといっても、輸入業者が食品メーカーではないという点である。商社が安い時期を見計らって、大量に買いつけておいたものなのだ。食品メーカーに対し売却できなければ、いつまでも野積みになっているわけである。もちろん港にはたくさんの倉庫がある。しかし、倉庫で保管するとなると、野積みの3倍ほどのコストがかかる。それならば、多少使えなくなる部分がでてもかまわないということだ。 また取材を通してかなり危険に思われたことは、いとも簡単に容器のフタが外せることだ。この野積みされた野菜のところまでは、港湾関係者でなくとも割合自由に入ることができる。つまり、誰かが何かを混入させようと思えば、楽にできてしまうのである。いままでそういった問題は生じていないが、かなり怖い話である。 ★隠され始めた野積み野菜 こうした輸入野積み野菜の話は、このところ各マスコミでも取り上げられ、また港湾労働組合などによる港見学会も頻繁に行われるようになった。その結果として、野積みの場所が移動しつつある。野積み野菜隠しが行われているようだ。ビルの屋上やビルの片隅にひっそりと置かれているものが多くなった。 さて、野積みにされていた野菜は、大半が塩漬けのもの。キュウリ、ナス、ショウガ、ラッキョウなどが中心で、ゼンマイやワラビ、筍といった山菜も多い。タイ、台湾、中国などの国名が、プリントされた容器が目につく。 食塩の殺菌力は、私たちが日常食物保存のために使用しているものである。しかし、1年以上経ってもその食品を腐らせないで保存できるかどうか、素朴な疑問がわき起こる。おそらく強力な防腐剤が使われているのではないだろうか。それでも、一部腐敗しているものがあった。「山菜類は、かなり変色してしまったりもしているようですが、食品メーカーでは一度脱色してから着色して製品を作っているようですね」とは案内してくれた横浜港湾労組の人。 そういえば、山菜の漬物などでは、よく色落ちするものに出会うことがあるし、食堂でもショウガなど食べ放題なところもあるが、その理由が港にあったのだ。 ★野積み野菜はこうして生まれ変わる 港で野積みされていた山菜は、往々にして山菜の国内産地へと運ばれ、ふる里名産品に変身する。“そんな馬鹿な”と思われる読者もいるかもしれないが、論より証拠が上の写真(掲載なし)。本誌編集部が、栃木県足利市郊外において発見したものだ。外の木箱はかなり黒ずんではいたもののMADE・IN・TAHAIRALNDや YOKOHAMAという文字は何とか読めた。中身はショウガ。そして近くの小さな工場の前には、洗浄中のショウガがあった(F)。 輸入食品がふる里名産品に化けてしまうことに対しては、どうも納得がいかないし、不当に思われる。ところが、公正取引委員会の定義では、“商品の内容に実質的変更をもたらす行為が行われた国”を原産国として、かまわないことになっているのだ。 例えば、米国などから輸入された玄ソバ(年間8万t弱輸入されている)が、長野でソバ粉にされ、製麺されれば、信州ソバと表示して何ら問題はないのである。横浜の倉庫から出庫される玄ソバは、ほとんど長野ナンバーのトラックに積み込まれるという。 その他、中国などから輸入される人毛は、アミノ酸をとるために醤油の産地へ、落花生は千葉へと運ばれるそうだ。 このように、私たちは、輸入食品とは知らずにたくさんの輸入食品を食べてしまっている。輸入食品がそれ自体で悪いというわけではない。ただ問題は、野積み野菜を含め、安全性の上から多くの疑問が投げかけられている点にある。とりわけ、港で実際に検査されるものは、わずかに3〜4%。ほとんど書類審査だけで私たちの食卓に上ってしまうのだ。残留農薬や有害な添加物等のチェックは、業者自らが行う自主検査にまかせられているので、検査の品物と実物とが異なる場合もあるとか。不安がいっぱいだ。 後手に回るチェック機関 -害がわかるのはいつも食べてしまってから-
★知られていない残留農薬の実態 スーパーの生鮮食糧品売り場に行けば、色とりどりの野菜や果物が美しく並んでいる。それらの中に有害な農薬が残留したものがあるとしても、私たちはそのことを知らずに毎日の買い物を行っている。新鮮そうに見えるとか値段が安いといった基準で、おおかたの消費者は食糧品を選んでいく。果たしてそれでいいのであろうか。一部の消費者の中には、有機栽培野菜を生協から手に入れたり、農家と直接ネットワークを結んで無農薬野菜を確保したりの自己防衛をしているが、そうした例はあくまで少数派に過ぎない。残留農薬農産物が身近にあるということ、そしてそれが人体にどのようなリスクを負わせているのかといった危険性に関する情報が多くの市民に届いているとは言いがたいのが現状である。 とはいえ、リスクが少しでもある食品はもう食べたくないと国民全員がたとえ思っても、今の日本の食糧事情では不可能であることも事実である。日本人が毎日口にする食料をカロリーベースでみると、およそ51%が海外からの農畜産物や加工食品によってまかなわれている。日本人の胃袋は既に飽和状態にあるにもかかわらず、毎年食糧の輸入はまだ増加している。そして問題は、その海外からの輸入農産物に、ほぼ例外なく収穫後に保存・殺虫等を目的に多くの農薬が混入されていること。日本の台所事情はこうした残留農薬の可能性が強い食糧抜きにはもはや成り立たないのである。 ★許容基準内であれば本当に安全か 国によって残留農薬の許容基準は異なるが、基本的には研究や実験を経た後に人体に悪影響がないとされた種類と量が決められている。しかし、過去の例を見ても分かるように、安全とされていた農薬や添加物が後になって危険性が認められ許可を取り消されるケースがかなりある。殺虫剤として1950年に登録されたクロルデンは、発ガン性や中毒が認められ、68年に農薬登録を失効した。その後もシロアリ駆除用に建築木材への塗布、敷地土壌への注入処理剤として多用されたが、86年化審法(注)により特定化学物質の指定を受け、すべての用途で製造・販売・使用が禁止された。こうした例からも分かるように、非常に危険な化学物質が農産物に混入されていたとしても、私たちは知らずに食べてしまうことになる。いわば、害が分かるのはいつも食べてしまってからであり、政府や研究機関に全幅の信頼を置いていいのかどうか不安が残ることは否めない。 こうした私たちの食糧環境を側面からサポートする公的研究機関がある。東京都立衛生研究所(新宿区百人町)は、さまざまな公衆衛生の分野で調査研究・試験検査・研究指導を行い、都民の健康を守ることを目的に昭和24年に設立された。同研究所の生活科学部食品研究科では、環境指導センターと連携して、一般の市場やスーパーなどの店頭に並ぶ農産物や食糧品を購入し、残留農薬の実態調査を行っている。1990年4月から91年3月にかけて行われた最新の調査結果の一部が上の表で、私たちが日ごろ口にする野菜や果物にどれくらいの農薬が残留しているのかが明らかにされている。 同調査を手掛けた食品研究科の永山敏廣主任研究員によると、この調査は昭和57年度より始められたという。その理由として、近年の生鮮青果物輸入の急増と、それらの安全性に対する懸念の声が高まってきたことを挙げている。過去の調査を含めて規定の基準値を超える数値が検出されたケースはほとんどなく、見つかった場合はすぐに摘発されるシステムが作動するから監視体制にもすきはない。では、許容範囲内の残留農薬とはいえ、食べつづけることによって人体に悪影響は出ないのか、との質問に対し、永山氏は「現在の研究水準から言うと、通常の食生活の範囲内であれば安全だと答えることができます。ただし、将来化学や医学等が進歩して新しい事実が分かったとき、今の基準が変更されるという可能性はあります」と語る。通常の食生活の範囲内というのは、例えばレモンの皮ばかり毎日相当量を摂取するといった例外的な行為を考えないという意味である。 残留農薬は、もちろんppmというごく微量な程度しか食品に付着あるいは浸透していない。大量に服用すれば即効性のある毒物でも、微量ならば一見何の影響も受けないように見える。しかし、何十年という単位で毎日のようにとりつづけて果たして本当に安全なのかどうかは、分からない。私たちの子どもや孫の代になって、初めて害が起こったとしてももう後戻りはできないのである。 注) 化審法〜化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 ポストハーベスト -収穫後の農薬の百害と一利- ★食糧輸入大国の弱点と農薬問題 ポストハーベストという言葉がここ数年新聞、雑誌など巷をにぎわしている。ポストハーベスト農薬とは、収穫後つまり畑から刈り取られた後の農作物に、保存や殺菌、殺虫等のために混入される農薬や化学薬品のことを指す。なぜポストハーベスト農薬がいま大きな問題になっているのか。それは、食糧輸入大国であるわが国に高レベルの残留農薬が検出される農作物が海外から大量に入ってきているという現状と、そして、日本でずっと禁止されてきたポストハーベスト農薬が今、海外からの圧力を受けて解禁されようとしている事実に対する危機感のためである。米の自由化問題にも関連するポストハーベスト農薬問題は、私たちが毎日食べる食糧に深くかかわる身近で重要なテーマと言えるだろう。 日本の食糧自給率が年々下がり、海外から輸入される農作物は増える一方であることは知っていても、その中に農薬がかなりの量で含まれているケースがあるという実態はまだほとんど知られていない。輸入農作物におけるポストハーベスト農薬の実態は、いったいどうなっているのであろうか。この問題に詳しい日本子孫基金事務局長であり食品評論家の小若順一氏に話を伺い、輸入される食料を取り巻く問題点に迫ってみよう。 「海外でポストハーベスト用に使用される農薬にはさまざまな種類がある。強力な毒性を持つダイオキシンを含む殺菌剤の2,4−Dや発ガン性の疑いが出ているくん蒸剤の臭化メチルなど、発ガン性があるとされるものだけでもその数は70以上にも及ぶ」という。なぜこのような危険な薬品を私たちが口にする農産物に使われなければならないのか、という疑問が浮かぶ。それは収穫された農作物の品質を保持するためである。はるか海を渡って私たちの食卓に並ぶまでの期間、鮮度を保ち虫がつかぬように何らかの手を加えなければならない。果物や野菜は色が多少落ちただけでも、商品としての価値は著しく損なわれてしまう。その意味で、収穫された能s?買う物にある程度化学的処理を施すことは必要なことと認めざるをえない。しかし、その方法と程度が問題であって、今の農薬づけになっている現状は、見栄えの良い農産物を手に入れることと引き換えにする人体のリスクを考えると、簡単に容認できる程度のものではない。 ではなぜ高濃度に汚染された農作物が日本に入ってくるのか。日本はポストハーベスト農薬を一部の例外を除いて食品衛生法で禁止している。現在厚生省はポストハーベスト農薬を含めた新たな残留農薬基準案を作成した。このまま最終決定に至ればポストハーベスト農薬は解禁されることになるが、今までのところは法律で認められていなかった。ところ以下に述べるからくりで、海外のポストハーベスト農薬づけ農産物が日本に入ってくるのである。 ★甘い検査体制とアメリカの許容基準 輸入農作物への日本の対応がもともと甘く、ポストハーベスト農薬を見逃しているうちに、年を追うごとに農産物の輸入が増加し、問題が大きくなりすぎて違反を違反として摘発することができなくなった、という背景がまずある。しかし日本の基準を超えた残留農薬は水際でチェックされるから、高度に汚染された農産物は入ってこないはずである。例として、年間4500t余り輸入されているイチゴの検査体制を見てみよう。輸入先は95%がアメリカのカリフォルニアである。 日本でイチゴに設定されている規制農薬は上の表にある14農薬。これに対してアメリカが収穫後のイチゴに使用を許可している農薬は5種類で、日本でチェックしている14農薬と一つも重なっていない。キャプタンは発ガン性が認められている農薬であるが、このキャプタンがたとえ高濃度に残留していたとしても日本の検査でひっかかることはないことになる。これはイチゴだけの例ではなく、じゃがいも、ニンジン、タマネギ、カボチャ、大豆などもまったく同様である。言わば的外れの検査をして、問題なしとして輸入が認められている農産物は、量に換算すると全体の99・9%以上に上っている。また、こうした欠陥のある検査費用が消費者の購入する価格に算入されているのである。 以上のような検査体制を経て日本に入った輸入イチゴには、驚くほど長持ちするものがある。市民団体である日本子孫基金が1988年の7月から8月にかけて行った調査によると、冷蔵庫に入れた輸入イチゴは3週間たってもカビがまったく発生せず、1ヶ月たっても写真の通りの色つやを保っていた。このイチゴからは0・9ppmのキャプタンが検出されており、異常に長持ちしたのはこの殺菌剤・キャプタンのせいだと推察される。 ここでアメリカのポストハーベスト農薬に対する許容基準を調べてみると、日本と比べて非常に甘い点が問題となってくる。例えば、殺虫剤のレルダン米への許容基準はアメリカでは6ppm、日本の登録保留基準は0・1ppmで、けたが違う。登録保留基準とは国内産農産物をチェックする場合に適用される基準であるから、輸入農産物の検査には用いられない。先にのべたからくりで、検査にひっかかることなく日本に入ってくる。日米の許容値に最も差があるのが、じゃがいもの発芽防止剤クロルIPCで約1000倍。10倍以上違う農薬は7種類あり、それらが使用されている農作物は小麦、とうもろこし、さくらんぼ、セロリ、レタス、柑橘類など30種に及んでいる。 こうした輸入農産物の実態を見ると、厚生省が作成した新しい残留農薬基準に歯止めを期待したいところだが、実際は海外の基準を追認する内容になっており、各消費者団体も見直しを訴えている。農薬にたよらない新しい殺虫方法や保存法も各国で研究が進んでいるが、世界最高水準を保ってきた日本の食品衛生を守り安心して食べられる環境を守ろうためにも、ポストハーベスト農薬はNO! という世論を消費者みんなで作り上げていくしかないのである。 日本と外国の規制の違い -安全よりも優先する経済の論理-
★新しい基準では摂取量が増える矛盾 91年12月9日、厚生省は34種の農薬の新しい残留基準案を決定した。この基準は、従来からあった26種の農薬残留基準を変更したものであり、対象となる農産物も53種類から130種類へと増やされ、形の上ではきっちりと法の網をかぶせたことになる。例えば、以前は規制の対象となっていなかったポストハーベスト農薬もその規制対象となる。現在ポストハーベストとして使用許可されている農薬は、アメリカで27種(主なもの)、カナダで14種、オーストラリアで23種、イギリスで20種程度となっている。今まで日本では、ポストハーベストを認めていなかったため、こうした農薬に対する残留基準がなかった。でもこれによって、しっかりと規制することが可能になったわけだ。 ところが、この新しい基準案は、後退だと主張する人たちがいる。 つまり、今まで日本では認められていなかったポストハーベスト農薬が規制対象となるということは、国産品に対しても同様の適用がなされることになってしまうのだ。 現在この基準案は、GATT(関税と貿易に関する一般協定)加盟国に対し、内容が通告されており、3月末に来る返事をまっているところだ。その後は、食品衛生調査会常任委員会における審議を通してから答申されることとなる。 確かにこの基準案には首をかしげざるを得ない部分もあり、安全性というより農産物の輸入自由化への布石と受け取れる節もある。 それでも、やはり農産物の規制種目の拡大は評価してもいいのではないかと思われる。従来は規制対象となっていなかったコーヒー豆やホップなどもこの案には加えられているし、“その他のいも類”というような形で、作物名が具体的に挙がっていない農産物も規制できるようになっている。 しかし、これとても手放しで喜ぶわけにはいかないらしい。検査する農薬の種類の拡大に加え、農作物の増加は、検査機関への負担を増す。検査費用の一部は農産物の価格へと反映され、農産物の全体的な価格アップが懸念されるからだ。 それでも、多少価格が高くても、子どもたちの健康のことを考えたら、安全な食物与えたいもの。その意味でもこの新しい基準の安全性について、再度考えてみたい。 ★根拠のあいまいな基準値の不思議 前ページでの表が、新しい残留農薬の基準案である。これを見ると、マラチオン(別名マラソン・園芸用としてもよく使われるので、なじみ深い殺虫剤のはず。『農薬毒性の事典・三省堂刊』によれば、「殺虫剤。防疫用薬剤。有機リン系薬剤で、主に接触毒により殺虫性を示す」とある)では、米が0.1ppmなのに対し、小麦は8ppmと80倍になっている。フェニトロチオン(スミチオン)でも小麦は、米の50倍という甘さだ。これらの基準値の根拠はどこにあるのだろうか。現行の農薬残留基準でもスミチオンに対する基準は、ほとんど0.2ppmだ。また新しく設定された小麦粉、ソバでも1ppm。同じような果物でもみかんは、0.2ppmなのに対し、新しく定められたレモンやオレンジは2ppm。よくこの数値を読めば読む程化学的根拠がないと思えてくる。「日本人の米の摂取量は、1日約200g、小麦は約86gです。摂取量で2.3倍の開きだけなのに、残留基準では50倍。これは、ポストハーベスト農薬を認めているFAO・WHOの合同委員会が穀類に対する勧告値(スミチオンは10ppm残留してもよいとしている)をそのまま基準値に持ってきてしまったためと考えられます」と反農薬東京グループ。 厚生省は、この新しい残留農薬基準設定の裏づけをどこに置いているのだろう。「日本人の食物摂取量と各種データを加味して(ここでいうデータは、メーカーや研究機関が行った既存のものだそうだ)農薬の一日摂取量を出し、基準値いっぱいに食べたとしても安全なように設定しています。また農産物や農薬を個々に取り上げてうんぬんするのは、農薬の使用状況がいろいろな場所で異なるということを理解していないのでは・・・・・・」と強気の発言。そして、この基準案ですべての農薬が網羅されているわけではないので、順次基準値を設定していきたいとのこと。 とは言うものの、私たちは、今までのようにポストハーベスト農薬は認めないという姿勢の方に共感をおぼえる。農薬をここまでは使っていいというような言い方より、農薬を減らす努力を考えてほしいものである。 ポストハーベストを水際でフォロー -日本についてから発ガン物質をかける-
★強力な発ガン農薬が最近まで 農薬の散布法にはさまざまなものがある。通常よく見かけるのは、噴霧法。他にも灌注法(土壌に薬剤を注入したあと、土で覆ったりして一定期間放置する)や空中散布、塗布法などがある。 そのなかで、よく港の倉庫なおで行われるのがくん蒸法。これは、密閉した室内でガス状くん蒸剤やくん煙剤を充満させ一定期間放置しておくというものだ。 かつてアメリカでは、収穫後の農産物の貯蔵にあたり、二臭化エチレンという殺虫剤でくん蒸を行っていた。もちろん輸出農産物にも、相手国で害虫が発生しないように、かなり使われていた。 ところが、その二臭化エチレンの発ガン性が、74年アメリカの国立ガン研究所の動物実験によって明らかになったのだ。その後アメリカの環境保護庁が、84年には、二臭化エチレンの貯蔵穀物、穀物加工機への使用・販売を禁止、続けて柑橘類への使用も禁止した。 なにしろこの二臭化エチレン、アメリカの発ガンリスクの推定では、1日8時間・週5日の割で45年間吸入した場合、1ppmの濃度では、なんと1000人中300人前後が発ガンするという。日本の労働環境濃度規制値0.13ppmでは40〜80人の発ガンリスクだ。この二臭化エチレンがポストハーベストに用いられなくなったのは88年のことだ。 ★新しいくん蒸剤にも発ガンの危険 とにかく、強力な発ガン農薬が使われなくなったことは歓迎すべきである。たとえ既に十分食べてしまったとしても、わが国の行政の対応が遅れたとしてもだ。その反省を生かすところに、私たちの生活の進歩があるのだろうから。 しかし、どうやらその反省が生かされていないようなのだ。前のページの図が輸入食品の市場へ流れるまでの防疫システム。この水際で、農産物に対するチェックが行われ、害虫などがいたとき、輸出国サイドでくん蒸が行われていない場合に、くん蒸が行われる。横浜港湾労働組合の調べでは、「輸入小麦の3割、トウモロコシは8割、豆類は7割もがくん蒸されているんですよ。かなり問題のある臭化メチルでね」とのことだ。 この劇物に指定されている臭化メチルの毒性はかなり強く、中毒症状としては悪心、嘔吐、酩酊状態、めまい、頭痛、上気道の刺激、灼熱感、肺水腫、呼吸困難、喀痰、チアノーゼ、眼球震橙盪、散瞳、四肢けいれん、麻痺、狂燥状態、ショックなど(『農薬毒性の事典』)がある。当然重症ならば死に至る。また常温で気体の化合物であるので、くん蒸に当たっては、写真のようにガスマスク着用ということになる(本誌編集部では、このくん蒸風景をぜひ写真に撮りたいと努力を重ねたが、撮れないままに発行日を迎えてしまった。くん蒸は、なぜか極秘裏に行われているようだ。問題がなければ、もっと堂々とやってほしいものである)。 こんな危険な農薬を食物に使用して問題はないのか。グルティン(植物性のタンパク質のひとつ)を破壊し、タンパク質と反応し、脂肪を変質されるという。つまり食物の品質をかなり悪化させてしまう。おいしい農産物をまずくしてしまうのだ。 こんな農薬なのに、臭化メチルの残留基準は決められていない(新しい基準案にも入れられなかった)。理由は、どうやら気化しやすい薬剤のため、農産物中には残留しないと思われていたからだという。そんな非科学的なことが許されていいのだろうか。農水省食糧研究所の放射性炭素を用いた実験で、臭化メチルくん蒸された大豆や玄米には、反応したメチル部分が4週間後にも残留していた。 臭化メチルの危険から身を守るためには、輸入食品をとらなければいいと考えるのは早計である。土壌くん蒸剤としても使われているからだ。そこからは、約5%が地上作物へと吸収される。ということは、臭化メチルの使用そのものをやめるような方向性を追求しなければならないだろう。 チェルノブイリが招いた“放射線汚染” -『死の灰』を食べていませんか-
★放射能に安全基準はない チェルノブイリの事故の後、かなり高濃度な放射能に汚染された食品が輸入され、マスコミでも相当騒がれた。厚生省の決めた370ベクレルを超え、輸出港へ積み戻されたという話題も多く聞かれた。 事故から6年たった現在わが国では、あまり放射能汚染については語られなくなってしまった。 しかし、チェルノブイリ事故によってバラまかれた各種放射性元素は“ストロンチウム90”“セシウム137”“プロトニウム239”など。これらの元素は、ベータ線やガンマ線を放射して別の元素に変わるのだが、その期間はマチマチ。よく放射性元素では“半減期”という言葉が使われる。これは放射能の強さが半分になる期間のことだ。例えば“セシウム137”の半減期は30年。ということは、チェルノブイリによってまかれたものは、2016年に半減期を迎えるわけだ。ただ誤解してほしくないのは、次の30年で0になるわけではないという点だ。次の半減期でまた半分になる。要するに、“セシウム137”の場合、60年後には4分の1になり、90年後が8分の1、120年後に16分の1と減っていくのだ。 この放射線の怖さは、まず目に見えない点。もちろん放射線に当たっても何も感じない。致死量より多い放射線を浴びてもその瞬間は何も感じないという。その後1〜2週間で確実な死が訪れるわけだが・・・・・・。 致死量に相当するほどの放射能汚染は、私たちの日常生活において、まず考えられない。問題は、発ガン性や催奇形性。これは、体の細胞が持っているガン遺伝子に対する防御機能を破壊したり、DNAに作用したりするためだ。チェルノブイリの近くでは、現在でも奇形児や奇形の動物が生まれつづけているという。 では、わが国の放射能汚染に対するチェックは大丈夫なのだろうか。厚生省基準は370ベクレル(ここで、またベクレルという耳慣れない単位がでてきたが、健康を守るためにもしっかりと理解しておきたい)。1ベクレルとは放射性原子が1秒間に1個の割合で別の原子に変わりつつあるときの放射能の強さの単位である。そのほかに、生物に対する影響を示すものとしてシーベルト(以前はレムという単位を用いていた。1シーベルトが100レム)がある。この370ベクレルというのは、どうして決められたのだろうか。港湾関係者の話によると、「どうも、370ベクレルというのは、一けた多いようですね。これは、ヨーロッパでチェルノブイリ以降“最大でもこれくらい”としたものをそのまま持ってきてしまったからのようです。」ということだ。しかし、360ベクレルなら安全ということはない。もっと言うならば、1ベクレル の放射能であっても被ばくには変わりないのだ。そのうえ、放射能障害はすぐに現れない。食べてから数年後に発ガンしたとしても、その因果関係を証明することは不可能だ。 ではどうしたら、放射能から身を守ることができるのか。一応チェルノブイリに近い国の作物をとらないようにするのが精一杯な自衛手段と言われているが、原産国表示は前述したようにアテにならないので、私たち個人の力では、放射能汚染を止めることはできないようだ。 ★もうひとつの疑惑“照射食品” 放射能汚染と類似しているが、“放射線照射食品”に対する危険性も声高に叫ばれ始めている。“照射食品”というのは、ある食品の殺菌や農作物の発芽を止める目的でコバルト60やセシウム137から出る放射線を当てたもの。このアイデアは、米軍がジャングルの奥地までハムや肉を腐らせないで運ぶために考えだしたものだという。第二次世界大戦中のことだ。 わが国では、1965年に科学技術庁の原子力局が“原子炉の多目的用法の開発”をうたって研究を開始。その品目として米、小麦、ジャガイモ、みかん、ウィンナーソーセージ、水産練り製品が選ばれ、1974年、北海道士幌町農業共同組合から照射ジャガイモが出荷され始めた。私たちの身の回りには、照射ジャガイモがかなり出回っているはずなのだ。それというのも、下の写真のように、箱には記載義務があるが、そこから小袋に分けて販売する場合、照射食品であることを表示しなくても良いからだ。 照射によって殺菌ができれば、危ない添加物や農薬を使う必要もないのでクリーンな食品のイメージがある。もちろん放射性物質とは異なり、放射性物質が食品に入ることもない。夢の技術のような印象を受ける。 「でも政府は、68年、軍隊への照射食品の許可をとり消したのです。それは、照射したベーコンやハムをネズミに与えたら繁殖力の低下、死亡率の増大、体重の減少、赤血球および血色素の減少などが認められたからなんです。日本でも、ジャガイモにつづけて照射タマネギを許可する方向だったのですが、動物実験で死亡率の増加、睾丸と卵巣の重量減、食べた親から生まれた子どもに奇形が出たりしたので、まだ許可になっていないのです」と食品照射ネットワーク事務局。原因は、放射線の強いエネルギーによって、食品の中に新しい化学物質が生まれるためと考えられているが、詳しいことはまだ分かっていない。 加害者はだれ? -農薬の害は意外に身近!-
★日本猿が私たちに教えてくれた DDT、チクロ、AF2、過酸化水素など、かつて私たちが日常摂取したり、使っていたりした添加物や薬剤が発ガン性を持つということで禁止された。そのたびごとに、“もう十分に食べてしまった”と思うだけで、行政やメーカーに対しては割合、寛容である。それはなぜなのだろうか。公的なものに弱いとか他人に対して無関心であるといった国民性にその理由を求めてしまうことは簡単である。 でも本当のところは、高度情報化社会と言われながらもその情報があまり知らされていないという点にこそ答が存在している。 左の写真は、長野県・地獄谷の日本猿。“モズ”と名づけられたこの母親は、四肢に障害を持っている。先天性だ。こうした奇形の猿が全国の野猿公苑で異常な出生を見たのが1970年ごろ。ちなみに地獄谷の場合、72年に生まれた13頭の赤ちゃんのうち、なんと6頭までが奇形だったという。他の公苑でも70年代前半には、奇形猿の出生率が30%を超えるという報告が相次いだ。一部の公苑だけでなく全国レベルでの高率な出産は、餌づけ後に現れたという。おりしも70年代前半というのは、60年代後半の高度成長のツケが表面化した時代。高度経済成長は、森林を開発の対象として、自然環境を次々と破壊し、野猿など野生の動物に山を捨てさせてしまった。開発にあたっては、大量の除草剤や殺虫剤が散布された時代でもあった。 こうした時代背景のなか、研究者たちは全国の公苑で共通して与えられている餌や猿が毎日飲む水に含まれる物質を調査。残留農薬の催奇性を疑ったからだ。 結果として薬物を特定するに至ってないが、餌に関しては相関関係を見いだしている(前ページの表)。特に、大豆は、わが国で餌づけが始められたころから使われ、餌づけ是非論によって餌の減量が始められたときもいち早くその対象になったのである。そして、現在もそうであるが、大豆は大半が輸入品であった。 奇形猿は、私たちがつくり出してしまったと言っても過言ではないだろう。この経験を生かさなければ、明日はわが身。 ★未来からの警告としての農薬禍 輸入レモンから2、4−Dが検出されて問題になったことがあった。この2、4−Dというのは除草剤。ベトナム戦争のとき、アメリカ軍が2,4、5−Tとの複合剤『オレンジ』剤として枯葉作戦に用いて有名になった農薬だ。その中に含まれるダイオキシン類によって、二重胎児に代表される各種奇形児が生まれてしまったことは、マスコミでもセンセーショナルに報道された。“ベトちゃん・ドクちゃん”が来日したこともあって、ダイオキシンの名前は、かなり知られたと思う。しかし、その毒性についてはあまり知られていない。発ガン性、生殖系障害、催奇形性、免疫毒性などが判明している。 そんな猛毒を私たちは、とっていたのだ。“ベトちゃん・ドクちゃん”への同情心を持つことは否定できないが、その毒への追及をもっと考えてもいいのではないだろうか。ベトナムで起こったことは、わが国でも起こりうるのだ。現に、東京都のある産婦人科の医院長は、「奇形児のデータは、プライバシーの問題も絡むので公表できませんが、かなり当院でも増えているような気がしますね。多指の赤ちゃんなど生後すぐに余分な指をとってしまうからいいのですが・・・・・・」と語る。上の写真は、ベトナムの奇形児であるが、わが国でも同様な症状の子どもがうまれている、とも。 ベトナム戦争は、もうだいぶ昔の話になってしまった。だが、私たちは、ベトナムの農薬禍を未来のこととして考えていかなければならないかのようだ。なにしろわが国の農薬に関する規制はかなり甘いと思われるから。ダイオキシン類の中の2,3,7,8−四塩化ダイオキシンの1日の摂取許容量も、欧米では、1〜10pg(ピコグラム、1兆分の1グラム)/kg体重なのに比べて、わが国では100pgとなっている。 私たちは、便利さと引き換えに、次々と化学物質を体内にとり入れている。そのおかげで、ガン患者も増え、アトピーなどのアレルギー疾患、原因のまったく分からない疾患も増加している。便利さより、健康からの視点で食を考えたい。 ★子どもに蔓延するアトピー性皮膚炎 いまアトピー性皮膚炎は、子どものアレルギーの中でも最もポピュラーな病気の一つとなっている。早いもので生後2〜3週間で発病し、灰色や赤味を帯びた皮膚の疾患と痒味を持つことが特徴であるが、乳児湿疹やじん麻疹などと厳格な区別がつきにくいため、患者数や罹病率などはっきりしたデータはつかめていない。推定で0歳から15歳の子どものおよそ3〜20%がこの病気に冒されていると言われている。発病はほとんどが乳幼児期で、治療によって5〜6歳までに症状は軽くなり、成人までにほぼ完治する。 アトピー性皮膚炎に詳しい昭和大学の有田昌彦助教授によると、ここ数年の印象としてアトピー患者は増加傾向にあるという。その要因の一つとして、大気汚染や水質汚濁などの環境汚染の増加と、そして生活様式の変化を次のように説明する。まず米中心の食生活から高たんぱく質をとる欧米型の食生活に変ったこと。昭和10年と現在を比較して、1人当たりの年間消費量が肉類は12倍、鶏卵は7倍、牛乳・乳製品は21倍に増えている(数字は農林水産省調べ)。そして、ペットの増加やカーペットの普及によるダニの増加などの住居環境の変化。アトピー患者は2歳前後になるとダニに対する陽性反応を示し始めることが知られている。最後に、化学物質の増加。食品添加物や薬品添加物、農薬などがこれに当たる。 一般には食物に含まれる食品添加物や汚染物質がアトピーの原因だと言われているが、実はその点に関してはまだはっきりしていない。アレルギーであるかどうかさえ専門家の間で議論が分かれているほどで、アトピーが汚染された食物によるものとは特定できていないのが実情だ。しかし、最近では一部のアトピー性皮膚炎に食物(特に卵、牛乳)が絡んでいるものがあるという点で、肯定的な意見が大勢を占めるようになってきている。いずれにせよ、体にとって有害な因子がアトピーの原因になっていることは間違いない。危険な食物をできる限り避けるのが、原因不明のアトピー性皮膚炎から子どもを守る方策の一つなのである。 ★農産物を食べなくとも農薬汚染?! 輸入食品の危険性が分かったので、国産無農薬野菜だけを食べることにしても、私たちの体に農薬は入りこんできてしまう。農薬(あるいは類似化学物質)は、農薬とは無縁の生活を送る人の周囲にもあふれている。 「家庭用のスプレーの殺虫剤がありますね。その殺虫成分は、農業用のものとまったく同じです。かつては有機塩素系のものが使われていましたが、現在では“ピレスロイド系”“有機リン系”“カーバメート系”がほとんどです」ということで、反農薬東京グループで、その説明をうけた。 ・ ピレスロイド系
・ 有機リン系
・ カーバメート系
そして、衣料・繊維製品にも農薬(および類似物)が使用されている。例えば抗菌(殺菌)加工した靴下などには、TBZ(レモンの防かび剤に使用されている)、イルガサンDP−300(工業用殺菌剤)などが含有されている。 このように、私たちの生活は食品だけでなく生活全体が薬品づけになっている。したがって、生活全般からこれらの薬品を排除するための努力が要求されている。便利だからと言って、安易に殺虫剤に頼る生活を変えていきたいものである。 ★新たな健康障害『MCSシンドローム』 大気汚染としてシックビル症候群(室内複合汚染)が問題になっているが、さらに新しい健康障害として、“MCSシンドローム(複合化学物質過剰反応症候群)”が話題になっている。これは、ごく微量の化学物質に対して生理的な反応が出てしまうことだという。 一般的な症状は、呼吸器系の異常、眼の異常、頭痛、疲労倦怠感、精神不安定、物忘れ、皮膚障害、筋肉・関節痛、泌尿器系異常、心臓血管異常など。こういった症状が現れる原因は非常に多岐にわたる。食品添加物や残留農薬はもとより、排ガス、合成洗剤、芳香剤、たばこ、ガスストーブの匂いなどに反応してしまう人がいるかと思えば、コピーやレーザープリンタからの匂いに症状を訴える人もいる。起因物質の多くは、揮発性の有機化合物との指摘もあるが、それらは日常生活の中で無数にあり、また複雑に絡みあっているので原因は簡単にはみつからない。米国だけで数百万との予測も。 農薬から身を守る -こうして食べれば少しは違う- ・ 皮のあるものは皮をむく
・ 結球野菜は外葉をはがして捨てる
・ 肉は筋と脂肪を取り除く
・ レバーは血抜き、水洗い、湯通しを
・ 生産者がわかるものを選ぶ
・ 表示をよく見る
・ ぬか床は毎年取り替える
・ バナナはつけ根を切り落とす
・ 旬でない農作物は避ける
・ 流水でよく水洗いする
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