医療 クスリを考える
取材・文/岸原 千雅子
一度体内に入った薬物は、簡単には排出されません。薬には必ず副作用がつきまといます。また、体に生来そなわっている自然治癒力を、弱めてしまうのも事実です。健康を気づかうなら、薬を使う前に、もっと薬について知るべきでしょう
薬の効果を本当に知っていますか?
あなたは薬がなぜ効くのか、どこが危険なのかを本当に正しく知っていますか? なんとなくという気持ちでこれだけ莫大な薬が消費されているなら、これはまさに信仰です。真に信じられる物を、あなた自身の目で確かめて下さい。
人体にとって毒である薬はすべて血液にのって全身をめぐる
★市販薬の歴史は問題があって消えていった薬の歴史
薬は、生命活動や身体の雑持に必要なものとして私たちが長い時間をかけて選択してきた食物とは違い、30数億年の生命の歴史の中で今日になって初めて人体と接触するものです。私たちの体にとって薬は基本的に異物であり、毒なのです。薬を使うことは体内に毒を取り込むことだと、まず認識しておく必要があります。
最近、医者からもらう薬を勝手に減らしたり飲まない人が増えているといいます。薬局で買う市販薬は安全で、医療機関で出された薬はどうも信用できないという風潮がありますが、これはとんでもない誤解です。市販薬は、医療で使われる薬と成分的には同じもの。その中から患者によって詳しく判断する必要のない部分が、市販薬になっているのです。これはスイッチOTCといって、特に最近増えています。また風邪薬や胃腸薬など、一般的にかかる頻度の高い病気の薬であることも市販薬の条件といえます。
しかし、市販された後で副作用が見つかり、禁止された薬は数多くあります。市販薬の歴史とは、有害性や効果がないということで問題になり、市場から消えていった薬の歴史でもあるのです。
★薬は、血液の循環にのって何度も体中をまわっている!!
そもそも薬はどのようにして身体に効くのでしょうか。薬には、@吸収され、A身体の中を輸送され、B目的の場所で薬理効果を発揮する、という3つのステップが必ずあります。吸収のされ方には、表1のように経口薬、舌下錠、坐薬、塗薬、注射の5通りがあります。
まず経口薬は口から飲み、消化管、主に小腸の粘膜から吸収されて、そこを走る毛細血管の静脈血に入ります(次ページイラスト参照)。これが合流した門脈を通って肝臓に行き、代謝を受けた後、血流に乗って、全身をめぐります。
代謝とは、薬を化学的に変化させて、より水に溶ける形にしたり、薬理作用のない形にしたりという、いわば解毒作用。最初に肝臓を通った時に全部の薬を代謝することはできないので、血液の循環に従って何度も通る間に、徐々に解毒されていきます。
皮膚薬か肝臓に障害を起こす!? 予期せぬ副作用はどんな薬からも
★坐薬や塗り薬はまず心臓を直撃
一方舌下錠は、粘膜の下の毛細血管から吸収され、まず心臓に行きます。狭心症の薬、ニトログリセリンが舌下錠なのはこのためです。その後動脈流に乗って全身をめぐりますが、この時初めて肝臓を通って代謝を受けるわけです。
坐薬は直腸の粘膜下の血管から、塗薬は皮下の血管から吸収され、同じく心臓に行ってから全身をめぐります。また注射は直接薬物を血管に注入するもので、これもまず心臓に行って一回りしてから肝臓で代謝されます。
血液中で薬は、血中のたんばく質と結合したり離れたりしています(147ページ図2)。たんばく質と結合しているものは薬としての働きを停止しており、単独で溶けているものだけが作用して薬効を現すのです。
薬はそのように効果を発揮する一方、血液に乗って循環する間に最後には排泄されます。多くは腎臓を通って尿として出ますが、唾液、呼気、汗や髪の毛などを通して排泄される場合もあります。また吸収されなかったものは消化管を通り越し、大便として排泄されます。
★眉毛に塗っていた育毛剤がひどい肝臓障害を起こすことも
このように薬はどんな形で吸収されたものも、血液循環に乗って全身を回るのです。たとえば鎮痛解熱剤を飲んで頭痛がおさまるのは、別に薬が頭を選んで作用したのではなく、血液に乗って全身を回っている間にたまたま通った頭で、そこにあった痛みや熟の原因となる物質に作用したにすぎません。
また皮膚のみに作用し、他に影響は与えないと思われがちな塗薬が、全身に副作用を及ぼすこともあります。実際いくら検査してもわからなかったひどい肝機能障害の原因が、実は眉毛に塗っていた発毛促進剤だったという例もあります。
よく子どもの解熱剤として、胃を荒らさないよう坐薬を使う母親がいますが、胃を通らないとはいえ、血液を通して副作用を起こす場合も当然あります。坐薬だから安全ということはないのです。
こんなにある!! 副作用で消えていった薬
製薬会社から申請された新薬は、中央薬事審議会の審査を経て厚生大臣が医薬品として許可します。市販までに10年の歳月がかかるといわれ、もちろん厳重にチェックされているはずですが、現実には多くの重大な薬害が起こりました。アメリカではFDA(食品・医薬品局)がこれらの薬害を未然に、あるいは早期に防いでいます。厚生省製薬課の天下り先は製薬会社。この癒着は大きな問題です。
・サリドマイド
西ドイツで開発された睡眠薬の一種。妊娠初期の妊婦が服用して、あざらし状奇形児が産まれた。1961年に西ドイツで問題になり、各国が発売停止した時期、日本ではさらに胃腸薬としても売られたため、被害者が拡大した。最終的な回収は何と63年だった。
・キノホルム
消毒剤として開発され、整腸剤に使われた。下半身から始まる神経のマヒと視力障害で、歩行困難や全盲に至るスモン病を起こした。70年までスモンは伝染する難病とされており、患者の周囲に消毒のためキ
ノホルムを使ったことが、さらに誤解を生んだ。70年発売禁止。
・クロロキン
もとはマラリアの薬。日本では61年から、腎炎の特効薬(実際には薬効なし)として売られ、リウマチやてんかんにも使われた。網膜に蓄積して失明させるクロロキン網膜症を起こす。この副作用は発売当時から医学的に明確だったが、実際は72、3年まで発売された。
・コラルジル
心臓病の薬として65年から売り出され、総被全署数は5〜20万人といわれる。肝臓や血液など全身の細胞に特殊な脂肪がたまるもので、肝臓障害を起こし、死亡する人もいたが、一般の肝臓病と区別できず被害は潜在した。
母親は自分が蓄積した“毒”を子どもに濃縮して排泄する!!
★体が分解できない薬は排泄されず、一生蓄積される
さて、血液に乗った薬物は、時にはたんばく質に結合したまま長いこと身体をめぐります。そのため、抗生物質によるアレルギーで出る発疹が、薬を飲んで一週間後に出てくるということもあります。
身体をめぐる期間の長さは、その薬物がどの程度水に溶けやすいか、代謝されやすいかによって変わります。従って水に溶けず、代謝もされない物質だと、一生蓄積され続けることになるのです。
公害で問題になったPCBは、人体には代謝・排泄がまったくできない物質です。これは脂溶性物質なので、皮下脂肪、細胞膜など全身の脂肪に蓄積します。一度蓄積したら決して出てはいかないのですが、実は妊娠した母親だけは、胎児に蓄積して出すことができるのです。
PCBの中毒症であるカネミ油症でも、母親は軽症なのですが、生まれた子どもは皮膚が真っ黒で典型的なカネミ油症の症状でした。母体にとって胎児は異物。その異物に濃縮して出せば、母親の個体維持には合理的です。胎児に脂質が多いということもありますが、ある意味では生命の合理性が働いているのです。
脂溶性の有機水銀が原因の水俣病の場合も、母親より胎児性の水俣病が重症で、問題となりました。また身体の部位の中でもたとえば脳などは非常に脂質が多いため、薬物が蓄積してさまざまな精神障害を起こします。
★たった一錠の薬がサリドマイド児を産んだ
さらに怖いのは、薬の副作用にはすぐに起こるものだけでなく、時間がたって初めて出現するものもあるということ。これは因果関係がなかなかつかめないため、145ページの薬害の例でもわかるように、よく効く薬だと宣伝され、盛んに使われていた薬が、後になって実は恐ろしい薬害を起こすことになるのです。
薬をたった1錠飲んだだけの母親にもサリドマイド児は生まれました。今飲む1錠が将来どれだけの影響を及ぼすのか、誰にもわからないのです。
時には何十年もたってその副作用がわかることもあります。
合成の黄体ホルモン(DES)は、流産防止に主にアメリカで使われていました。ところがこのDESを使った母親から生まれた女の子が成人に近くなった時、膣ガンが多く見つかりました。膣ガンが若い女性にできるのは大変珍しいため、さまざまな追跡調査をしてDESとの因果関係が明らかになったのです。
薬はたんばく質に結合しやすいため、遺伝子に結合する可能性もあります。こうなると突然変異すら起こすのです。
子どもや自分の体の回復力を信頼し「薬信仰」をなくす
★風邪による発熱は治癒のしくみ 注射で下げるなどもってのほか
子どもが風邪をひいたり熟を出したりすると、すぐに注射をしてくれというお 母さんがいます。しかし注射のしくみをよく考えてみて下さい。口から入ったものには一定の関門があり、消化管で余分なものは吸収されずに便として排出されます。ところが注射は、余分であっても有無をいわせず血管に入れてしまうものです。そのためたとえば増血剤の注射で鉄分が入り過ぎ、肝臓が固くなって働かなくなる鉄沈着症を起こすこともあります。
たとえば胃腸を通ると分解されてしまうインシュリンの投与、激しい嘔吐や下痢を起こしている人や、ショックを起こしている人に対しての水分や薬物の投与などには、注射は必要です。しかし子どもの注射による筋短縮症(筋肉細胞の障害)のデータでは、半分近くが風邪で打った注射で、他も消化不良や下痢、発熱の時の注射のため。必然性のない注射によって多くの障害が起こっているのです。
風邪をひいて熟が出るのは、一種の警報であり、また治癒のための大事なしくみです。熟が出ることで病気だとわかり、体がだるくなるので自然に体を休めるようになります。また39〜40度になると、ウィルスの繁殖は抑えられます。
せきも同様に、気管の中の細菌を外に出そうとして起こるもの。下痢や嘔吐も体の中に入った悪いものを出そうとするしくみです。せきや下痢を薬で止めれば悪いものが体にとどまることになり、解熱剤で熟だけ下げてしまうと、大切な治癒のメカニズムが壊されてしまいます。
私は子どもの軌だすぐ注射をというお母さんに、子どもの本当の力を信じていないんじゃないかとまず話します。子どもが初めて遭遇したものに強く反応して、抑え込みながら免疫を獲得する、その力をまず信じなければいけないと。
ほとんどの薬は対症療法ですし、抗生物質も風邪の原因であるウィルスには効きません。ただ熟を下げたりせきを止めることには何の意味もないのです。
★薬は「毒」が基本 要は使う側の意識次第
昔から「病は気から」といいますが、薬には効果があると思って飲むと特に薬理効果のないものでも効いてしまうという、プラシーボ(にせ薬)効果があります(表2参照)。薬理効果だけでなく、医療機関で出してもらったからとか、自分がお金を出して買ったんだからといった心理効果が、薬には確かにあるのです。
今の医学には相当の難病にも対応できる大きな力があります。従ってやみくもに薬の害を怖がるのはかえって危険です。
しかし基本的に薬は毒。薬を漫然と飲み続けてほかの病気の発見を遅らせていませんか。効くと思っている薬も実はプラシーボ効果ではありませんか。これまでの「薬信仰」を一掃し、自然治癒力を育んでいくことをぜひ考えてみて下さい。
[上に戻る]
薬は極力使わず注射もしない優しい医療を45年。自然の回復力を大切にして。
寺本医院院長 寺本 明先生
TOHRU TERAMOTO
明治45年、愛知県豊橋市生まれ。愛知医科大学(現在の名古屋大学医学部)卒。下之一色漁業組合共愛病院、弥富町海南病院の院長をそれぞれ勤めた後、昭和23年、名古屋市昭和区に現在の医院を開設。薬を極力使わない医療が評判に。
私が使う薬は必要最低限。決して余分には使いません。患者さんの中には、医者なら薬で治せばいいじゃないかという人もいます。同じ金額なら薬をたくさんもらった方が得だという損得意識で来る人もいます。私も根治療法があるなら薬を使ってもいいと思うんです。けれど対症療法なら、まして自分で養生して治るものなら、そちらを選択したいんです。
ある薬が副作用で胃腸障害を起こす場合、一般的には胃腸の薬を抱き合わせて使います。しかし私は、その根本の薬をなるべく胃腸障害を起こさない薬に変えて、別の薬を併用しないように心がけます。そうするのが本当だと思うのです。なるべく自然に逆らわないようにと考えているからです。
病気の診断はもともと、人間の五感によっていました。今血圧は血圧計で測りますが、以前は脈で見たものです。私は今も脈で見当をつけてから血圧計で測ります。脈には打つ頻度、固さ、速さがあり、これでいろいろな病気がわかります。
そのような医師の診断の結果を証拠立てるのが、検査です。検査は参考にするだけのもので、病名の診断はできません。ところが患者さんには、検査が最も重要だと考えて主治医の頭の中の判断を信頼しない傾向がありますが、これは非常に残念なことです。そのために医師側も過剰に検査を行うことになります。
注射も私は極力しないようにしています。飲み薬と違って注射は肝臓を通らないため、薬の毒作用を直接身体が受けることになるからです。坐薬も同じように、肛門のそばでは肝臓を通らずに直接血管から体循環に入ってしまいます。従って解熱剤の坐薬も使いません。
私がここで診療所を始めたのは昭和23年のこと。それ以来ずっと家内の手伝いだけで、看護婦も使っていません。2階を病室にと考えていましたが、収益に見合わず、入院を受ければ看護婦も必要なので一切やめました。そうやってようやくこのやり方を続けています。 現在80歳ですが、私自身はできるだけ自然に逆らわないように生きてきました。 昔からお腹を壊した時には、水だけは飲んで3食完全に絶食します。下痢をするというのは、お腹に入った悪い物を早く出そうとする身体の自然治癒力で、下痢止めを使うとこの力を妨げることになり、治りは極めて遅れます。これは本来の治療ではありません。完全に絶食すれば24〜30時間で治ります。
最近の子どもに多いアトピー、アレルギーですが、人間は身体の中に入ってはいけないものに対しては防御しょうとする作用があって、これがアレルギーとなって現れます。このアレルギーを起こすアレルゲンとして、今は空気中にあらゆるものが飛散しています。工場からの有毒物質、自動車の排気ガス、都会ほどアレルゲンが多いのです。金儲けや便利さが優先され、環境汚染に関心を持たなかったことでこうなってしまった。これからは人間ができるだけアレルゲンを飛散させないよう努力していかぬばなりません。
アレルギーの日常の対策として、ひとつは化繊がアレルゲンになる人が多いので、肌着は木綿に。また小魚、煮干し、ちりめんじゃこなど食べ物でカルシウムを多く摂ること。カルシウムにはアレルギーを防ぐ働きがあります。症状の激しい時だけは抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモンを使うのもやむを得ませんが、軽い場合はある程度我慢した方がいいでしょう。根本治療法はアレルゲンをなくすしかないのですから。
薬には決して頼り過ぎてはいけません。そして否定してもいけません。根治薬のある病気に対してはその薬をお医者さんに使ってもらって下さい。対症療法しかない場合には、医者の薬を使いながら、体力を衰えさせず安静にすることが最も大事です。熱が一時的に下がるからといって、注射や坐薬を乱用してはいけません。必ず主治医の指示に従って、使うように。薬は内服薬を主体にして、何よりも自然の回復力に頼ることが大切です。
Special Medical Report
★薬の出し方や説明に組得できる医者を選ぼう!
ヘルシーアドバイザー 加藤裕史さん
たとえ薬の危険性がわかっても、どんな副作用があるのか知っていても、いざ病気になったら最寄りの医者にかかり、もらった薬を半分捨ててしまうという人が案外多いのではないでしょうか。薬は安易に使わないことが基本。しかし必要な時には飲まなくてはいけません。情報があふれる現在、薬や医療とどうつき合ったらいいかを伺ってみました。
1)自分の目で医者を選ぶ
髪をカットしてもらう美容院を選ぶように、医者だって、選んで当然。薬の飲み方、効き方などを尋ねた時、自分を納得させてくれる医者を選ぶことです。そういうことをきちんと話してくれる医者は親身になってくれます。
また気持ちのリレーションがうまくいくか否かも重要です。薬の効果も違ってきますし、関係がよければ夜中の診察拒否もありません。
慢性病の治療の際に薬だけで治療して、一生薬を続けなさいという医者は、患者の治療について十分考えているかどうか疑問です。
あなたの体を熟知してくれるホームドクターを作ることが大切です。
2)中途半端に薬を増減しない
医者が一番困るのは、患者さんが中途半端な知識で薬を減らしたり増やしたりすることです。出した薬を飲んだものとして医者は経過を見ていますから、症状が良くならなければ、薬の種類を変えるか、強いものを出すのが普通です。もし飲んでいないのに強い薬を出せば、副作用が出てくるかもしれません。
薬について不審な点があれば、きちんと医者に聞くことです。ケーキを買う時にはおいしいかどうか聞いて買いますが、薬も同じで、効くかどうかをきちんと確かめるべきです。効きめを理解して飲むかどうかはとても重要です。効くことがわかって飲めばプラシーボ効果も手伝って、さらに有効になるからです。
3)薬の前にまず食ありき
最後に、「医食同源」を生活の基本と考えることが重要です。私たちが特に意識せず食事して摂取する食品添加物は、一日12グラム、年間4キロにもなるといわれます。ここには農薬は含まれず、それを加えるとどう考えても年間に5キロは、食事によって異物を身体に取り込んでいることになります。
この異物を解毒するために、私たちの肝臓そのものが昔に比べて弱っています。弱っている肝臓にいくら薬を与えても、代謝・吸収はできないのです。
初めに食ありき。食物についてまず考えていかないと、薬も効かなくなります。そのためさらに強い薬が開発されるという、悪循環を起こします。



