薬で生命は守れない!? 病気より怖い薬の副作用
取材・文/原プロジェクト
少しでも具合が悪いと、私たちは薬に頼ってしまいます。
しかし、薬が原因で重い障害、ときには死亡事故さえも起こるのです。
薬の怖さをよく知り、「薬害」から身を守りましょう。
★薬の原理を知れば必然的に副作用が見えてくる
私たちは、風邪をひいたり、頭痛がしたり、胃がむかついたりすると、わりあい気楽に薬を飲んでしまっています。テレビでも薬のCMは頻繁に流れていますし、配置薬はどこの家庭にもあるでしょう。
たとえば、生理痛で苦しいとき、つい鎮痛剤を飲んでしまう方も多いと思います。けれど、ここでその薬の効能書をよく見てください。たぶん『鎮痛・解熱』となっているでしょう。『鎮痛』が目的なのに、熟まで下げてしまうのです。これはどうしてでしょうか。
鎮痛薬としてよく知られる「アスピリン様薬物」(現在市販されている鎮痛薬は、非ピリ
ン系ですが、内容的にはほとんどアスピリンと変わらないようです)の働きは、炎症を誘発する物質が生まれるプロセスに作用し、それを阻害することで痛みを抑えるというものです。
ところで、このプロセスで発生する物質の一つに「プロスタグランジン類」というものがあります。人の体には体温を調節する働きがそなわっていますが、体温を上げるときにも、このプロスタグランジン類は発生します。ですから、この物質ができなくなれば、どうしても発熱は抑え込まれてしまうことになるわけです。
ただ、痛みと発熱はよく同時に起こるので、鎮痛効果にともなう解熱作用は、本来なら副作用なのですが、プラスイメージにとらえられ、そうは考えられていません。
ところが、このプロスタグランジン類は、胃酸の分泌を抑え、胃を保護する役割もになっています。鎮痛剤を飲むと胃を痛めてしまうことがよくありますが、これでその理由がお分かりでしょう。
ほかにも、プロスタグランジン類ができないと、血小板という血中の成分が作られにくくなったり、妊産婦の場合だと陣痛、分娩が遅れてしまうといった副作用も知られています。
人体にそなわった生命を維持する機能は、微妙なバランスの上に成り立っています。
ですから、このバランスを崩す薬の服用には、警戒してもしすぎることはないはずです。
副作用のない薬はない
薬学博士・岩城利一郎氏に聞く
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薬の服用は必要最小限にとどめるべきです
原則として大衆薬、つまり薬局で販売される薬には副作用がないことになっています。というのは、副作用が強い薬には厚生省の認可が下りませんから。しかし、薬とはすべからく作用があって副作用もあるものです。薬は患部だけに効くのではなく、体全体に影響を及ぼすと考えておくほうが自然です。薬には効能・効果、有効性があるのと同時に、必ず副作用(毒性)もともなっているのです
実は、大衆薬とは副作用の範囲が狭いということを前提に、厚生省が承認・認可したものです。使用法を誤れば体に悪い作用を及ぼすことは、メーカーがテレビCMや容器、外箱などで神経質なくらい「使用上の注意に留意すること」と繰り返していることでも分かるでしょう。もし薬を飲む場合には、必ず使用上の注意をよく読むことを忘れないでください。
アメリカなどと違って、日本の大衆薬で特徴的なのが、たとえば風邪薬に見られるような「総花的総合感冒薬」です。これは、風邪をひいたらすべての症状がでると想定し、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳去啖剤、これらの効果を高めるカフェイン系剤、体力の消耗を考慮したビタミン剤を、それぞれ一つもしくは二つ以上ずつ配合しているものです。
一見とても便利で効果的な薬のようにも見えますが、薬理学的にはこの総合感冒薬は中枢神経系抑制剤であり、また代謝抑制剤でもあるのです。これが体に及ぼす悪影響を見ていきましょう。
★副作用には悪寒・食欲低下から流産・奇形児出産まで
貧血・低血圧のある体の弱い方・ひよわ型の方は、用い過ぎたり連用したりすると、悪寒・寒気が高まり、代謝が低下するので食欲の低下、胃腸障害を引き起こします。冷え性の強い女性では、冷えはさらに増し、生理障害を著しくします。妊婦では、流産、早産、精神薄弱児・奇形児出産などの可能性が高まります。
また、高齢者の場合、新陳代謝能力が低くなっていますから、重い風邪にかかっていても発熟度は低く、薬を服用しているために、死に至るほどの肺炎を見逃すことが多くなります。
このような配合剤を全面的に否定するわけではありませんが、理想をいえば一つの症状にだけ効く「単味剤」が副作用も少なくベターでしょう。数種類の薬の連用は危険ですから絶対にやめ、少量で一発で治すことを心掛けてください。
いずれにせよ薬は必要最小限に抑え、適切に用いて症状を治めるか緩和させ、自然治癒力を高めることが肝要でしょう。
岩城利一郎
昭和2年生まれ。昭和24年富山薬科大卒、薬剤師、薬学博士。薬のの実態の研究及びヘルスアドバイザーとして執筆、講演多数。とくに食生活と健康度の関連を研究中
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風邪のすべての症状に効くという総合感冒剤。熟にも咳にも 鼻にも喉の痛みにも効くという万能薬で安心!…するのはち ょっと待って。薬には副作用があることをお忘れなく。体の 弱い人や妊婦、お年寄りの方などはとくに深刻な副作用で苦しむこともあるのです。薬に頼らないで人間の体が持つ自然治癒力を高めるのが.一番ですが、どうしても薬を、というときは一つの症状にだけ効く単一成分の単味剤のほうが副作用も少なく、体にやさしいのです
昌平クリニック院長・沢井洋征氏に聞く
★漢方薬の歴史は、極力副作用を抑えてきた歴史です
西洋医学で使用されるケミカル薬品と漢方薬との違いは、副作用の点でしょう。漢方薬のほうが副作用が少ないと思います。もちろんまったくないことはありませんが、漢方薬そのものの処方の仕方には、病気に効く薬が調合されていれば同時にその薬の持つ副作用を取り除く工夫がなされているのです。それに何といっても副作用が少ない大きな理由は、中国の後漢の時代から約二千年にわたり自然の草根木皮を用いてきた経験と、使用法――その一つが経口投与です。
たとえば西洋医学では高熱がでれば座薬や注射を用いることがありますが、漢方では大半が飲み薬です。注射は飲み薬と違って、薬物が肝臓を通過しません。それで、薬の毒作用を体が直接受けてしまうのです。座薬も直接血液の中に入っていきますから同じことです。その点飲み薬は、毒を取り除く働きのある肝臓を通過するので比較的安心というわけです。漢方でも注射に匹敵する「注腸」という方法もありますが、やはりそうした方法をあえて避けてきた歴史があるのです。
また当院には、西洋医学のお医者さんに通っていて治らずに、漢方医を頼って来る方も少なくありません。難病の場合、症状を完全に治すのは難しい面もありますが、以前より軽くなったということはあります。たとえば全身アトピー。たいていは西洋医でステロイドを飲んだりつけたりして、かなり難治性になってから来ます。ステロイドには症状を抑える効果は確かにありますが、多用すると「ムーンフェイス」といって顔がお月さまのように膨らんでしまい、皮膚が真っ赤になる(酒さ様皮膚炎)ことがあります。
それも漢方の処方によって、かなり良くなります。
漢方の大きな考え方のなかには「虚と実」というものがあります。「虚」は自然治癒力が衰えているので、補う薬を施し、「実」は病気の力が強いのでそれを取り除く薬を施すようにするということです。つまり漢方は人間の自然治癒力をある程度信じつつ、人間全体の気の流れを見ながら治療していくというものなのです。
沢井洋征
昭和54年山口大学医学部卒。広島大学医学部病院勤務を経て、広島鉄道病院へ。昭和62年上海の中医学院で漢方を学ぶ。昌平クリニック院長
薬害はこれからも起こる
佐藤嗣道
昭和37年、北海道札幌市に生まれる。サリドマイド被害児。北海道大学で薬学を専攻したのち、東京医科歯科大学大学院に進み臨床薬理学を学ぶ。現在は同大学の難治疾患研究所で研究活動を続ける。自らの薬害被害をふまえたうえで現在の医薬品をめぐる社会的な 諸問題について化学的に分析しようと、研究をつづける。とくに、薬は生みだす側も使用する側も正しい情報を知ることが、人間が薬を有効に使う第一歩と強調する
東京医科歯科大学・佐藤嗣道民に聞く
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薬害を引き起こす 日本の社会構造と国の体質
私は1962年10月にサリドマイド児として生まれました。
サリドマイドとは西ドイツで開発された催眠・鎮痛剤で、日本でも58年から睡
眠薬や胃腸薬として発売されました。そしてこの薬を服用した母親の胎内で影響を受け、四肢や耳に先天的な障害を持った子どもが多く生まれたのです。日本の被害児は世界で3番目に多い1200名(認定は309名)とされています。
実は私の生まれる前年の61年の11月に、西ドイツのレンツ博士がサリドマイドと奇形の因果関係を警告しており、諸外国では販売停止・回収の措置が取られていました。しかし日本ではそれから9カ月間も、妊婦にも安心というPRのもとに売られつづけたのです。母はつわりで気持ちが悪くなり胃腸薬として飲んだのですが、もし日本でも諸外国と同様に何らかの措置が取られていたら、私は被害者として生まれてはこなかったはずです。
それから30年。この薬害事件などをきっかけに新薬承認の基準が厳しくなるなど、いろいろ改善はされたのですが、結局、薬害を起こす社会構造、国の体質は何ひとつ変わっていないと思えるのです。
それを如実に物語るのは最近のエイズ問題です。日本のエイズ感染の約8割はアメリカから輸入された血液製剤が原因なのです。こんなひどいことが起こっているのは日本だけです。アメリカでは82年から、熱処理によってエイズウイルスを不活性化するようにして販売するようになりましたが、日本でこの措置がなされたのはなんと2年4カ月もたってからです。その間、アメリカの会社は危険を知りながら輸出をつづけ、日本の会社もそうと知りながら輸入していたのです。そして国も、何もしなかったわけです。
この構造は、サリドマイド問題が発生したときと何も変わっていません。そしてサリドマイド訴訟(74年、10年裁判の結果、国・会社とも最終的に責任を認め和解)のときと同じように国は責任を否定しつつ、公判の過程では原告に対して「海外旅行に行ったことはないですか」と問いたりするなど、裁判を長引かせようとしているとしか思われません。 エイズの場合深刻なのは、時がたてばやがて発病して死にいたることです。厳しい言い方をすれば、今、国がやっていることは、死に絶えるのを待っている状況といっても過言ではないと思えるのです。そして薬害を起こしながら被害者を救済せず、その姿勢が企業よりと感じられるのはサリドマイドのときと同じです。
★薬そのものに善悪はありません。大切なのは、正確な情報がきちっといきわたることです。
薬には三つの側面があるといわれています。一つには物質性、二つめは生理性。そして三つめが社会性です。まず、薬学の歴史をみてみると、化学物質としての薬とはどういうものかを追究してきています。これが物質性です。薬が生体に対してどんな作用があるかという研究が生理性。そして、薬がきちんと国民の役に立つように使われるために、どんな社会が必要なのかを問わなければなりません。これが社会性です。このなかには、行政、企業のあり方はもちろん医療機関のあり方、いろいろなシステム、国民の意識であるとかが全て含まれることになります。
さて日本の研究・教育の状況ですが、物質性には優れていますが、人に関する生理性についてはまだ態勢が不十分といわれています。薬の効きめは、動物実験と、少数の健康な人および患者に対する実験で調べます。ですから、実際に現場で何万もの人にワッと使用されるときには予想もつかないことが起こってくるのです。それだけ人を対象とした研究は難しいのですが、大学の医・薬学部でもそうした教育がほとんど行われていません。文部省や厚生省でも、人体への有効性・安全性がきちんと確かめられる研究をもっと促進してほしいものです。そして社会性に至っては、今やっとそうした機運が研究者の間で高まりだしたばかりです。
しかし、この社会性がもっとも大切なことなのです。サリドマイドも、薬そのものは善でも悪でもありません。体の安全と健康を考えて、それが危険かどうか、またどう使えばいいのかという情報がきちっと医療機関や私たちに知らされること、また私たちも、どんな薬を飲んでいるのかを知ろうとする姿勢こそ必要です。
日本人は薬好きといわれます。しかし、医師からもらった薬の服用を、自分の判断で止めてしまったりする人も案外多いのです。やはり、素人判断は危険なことですから、医師にだされた薬を指示を守って飲むことは基本的に大事です。ただ、その薬の名称、作用、副作用を知ることは飲む側の基本姿勢です。また、医師も薬の名称を教えるのは当然。ヨーロッパでは百年前からそれが当たり前ですから。
人間の体に薬はいらない!?
ここ数年の世界的な現代医学への見直し機運に、日本の医学会も注目しはじめています。
堀雅明
昭和31年生まれ。勤務医として耳鼻科の臨床に携わる一方、昭和大学医学部公衆衛生学教室の研究生としてPNI(精神神経免疫学)研究会を組織し活躍中。共同訳書『内なる治癒力』(創元社)
精神神経免疫学研究会・堀雅明氏に聞く
★人間が持つ自然治癒力に着目する精神神経免疫学
西洋医学を中心に進歩、発展を遂げてきた日本の医学会も、ここ数年の世界的な精神医学への見直し機運に注目する動きが出てきたといいます。たとえばそれは東洋医学であったり、禅やヨガであったりするわけですが、人間の持つ自然治癒力を見直し、体の病気が心のあり方と密接に結びついている、という古来からある考え方に近代医学がアプローチを試み始めたわけです。
こうした薬や外科手術だけに頼らない医学を精神神経免疫学といいます。病気と治癒のメカニズムを明らかにし、人間の持つ自然治癒力や生命力と心の関係に重さを置くこの精神神経免疫学は、医学のなかではまだまだ非主流で、日本でも若い医学者を中心に少しずつネットワークが広がってきたところです。
人間には、体が自らを癒す仕組み=治癒系(ヒーリングシステム)があります。擦り傷や切り傷、風邪や胃腸病など軽いものから重大な病気にまで、この自然治癒力は大きくかかわってきます。たとえば、ガン細胞は若いときから日常的に体のどこかで発生していることはご存じでしたか? 体が健康体で免疫力が強いときには、このガン細胞は大きくなる前に攻撃され消滅してしまいます。それが何らかの理由で機能しないとき、ガン細胞は腫瘍となり私たちの生命を脅かすのです。こうした事実ひとつをとってみても自然治癒力というものがいかに大切なものであるかが容易に理解できるはずです
人間の体に本来そなわっている自然治癒力を高める努力が大切です。
★薬はあくまで急場しのぎ大切なのは心身のバランス
現代人のほとんどがなんらかの慢性病といわれる持病を持っているといいます。近代医学の向上は急性疾患の患者を救うことには成功しました。しかし、近年さらに増える傾向にある慢性病に対しては、近代医学もあまり役に立っていないのが現状です。これは、慢性病が個人個人のライフスタイルと密接に関係があるからです。たとえば食(何をどのくらいどのように食べるか)、アルコール・煙草などの晴好品、環境など、個人の行動が健康に大きく関連しているうえに、さらに心理的要因が複雑に絡み合ってきます。つまり、煙草を体に悪いと気にしながら吸っているのか、おおらかに楽しんで吸っているのか。本人の受け止め方やかかわり方が、結果や健康に影響していくのです。
肥満による心臓疾患で外科手術を受けた患者さんがいます。この手術には莫大な費用がかかりますが、ほとんどは保険でカバーされます。しかし手術が成功して退院しても、数年たつとまた同じ疾患で入院、再手術というプロセスが再度繰り返されることがあります。本人のライフスタイルが改善されず、繰り返される食べ過ぎや不摂生のために、また莫大な費用と労力が消費されることになります。こうなると、本当に医者がかかわらねばならない仕事は、ライフスタイルの改善指導ということになってしまいます。もともと心臓に疾患ができたのも、太り過ぎによって体のバランスを崩してしまったからです。ライフスタイルを改善し、心身ともに健康な状態を保つということは、人間の持つ自然治癒力を高めていくということと同様なのです。体のダイナミックなバランスを保つことが、何よりも大切なのです。
長年連れ添った夫や妻を亡くすといった大きなショックや悲しみに襲われたとき、ガンにかかる危険性が高まるというデータがあります。精神や心がダウンしたとき、体の免疫力が低下してしまうという、心と体の密接な関係を証明する例のひとつです。人がなんらかの精神的ショックを受けたあまり寝込んでしまうという話は日常的に経験があると思います。いくら用心しても外から自分に降りかかってくる災難は防ぎようがありませんが、心のあり方が体や病気と密接な関係にあることはお分かりいただけるでしょう。
生来生命力の低い人、免疫や自然治癒力が弱い人には、薬や治療が必要となる場合があります。いくら人間には自然治癒力があるからといって、放っておいてよいとは言えません。しかし、こうした体の弱い人でも体質を徐々に変えていくことはできます。乾布摩擦で風邪をひかなくなったとか、ヨガを始めて病気をしなくなったなど、訓練やライフスタイルの変化で体がより強くなることは珍しくありません。その意味で、体の調子が悪くなったら薬を飲めばよい的な発想ではなく、大切なのは心身のバランスだということを忘れないでください。



