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★さまざまな要因が複雑にからみあって発症にいたる 食物アレルギーにしても、少し前なら卵・牛乳・大豆という3大アレルゲンを除去することで皮膚症状が消えたものが、最近では重症例が増えて、代替食が追いつかない状況になってきているといわれています。 もちろん、アトピー性皮膚炎イコール食物アレルギーというわけではありませんから、たとえ発疹があって、食物アレルギーの検査で卵に反応が出たとしても、その発疹の原因が卯であるとは言い切れません。また逆に、卵が陰性と出たとしでも、「卵は無関係だから安心して食べていい」ということにならないのが、アトピー性皮膚炎の難しさです(検査の結果は、卵に対するIgE抗体が陰性であることを示しているだけ。アトピー性皮膚炎は、すべてIgE抗体が関与して起きているわけではない)。つまりアトピー性皮膚炎に関しては、まだ確かな検査法や診断法が十分に確立されていないというのが現状なのです。 さらに言うと、「今あなたが食べたもののなかに卵(本人がアレルゲンと信じているもの)が入っていた」というように暗示を与えるだけで、アレルギー症状が起きることがあります。精神的な要因にも、アレルギーを引き起こす力が十分にあるのです。 また、ストレスによってホルモンなどの内分泌系に変化が起きても、アレルギー症状は出やすくなるといわれています。交感神経と副交感神経のバランスが崩れた自律神経失調状態も同様です。 このようにして、医師にも本人にも確定できないような多様な原因と誘因が複合的に作用した結果、皮膚に現れてくるアレルギー様反応をひっくるめて、私たちはアトピー性皮膚炎と呼んでいます。要するに、アトピー性皮膚炎はアレルギーという、よく分からない人体の反応のなかでも、特に「アトピー(奇妙な、不思議な、という意味)」と名づけられているほど、未知の部分が多い病気なのです。 ★化学物質過敏症ってなに? ★アレルギー急増の背景に水、大気の汚染、化学物質の氾濫が この“化学物質過勤富’に関する、数少ない専門家のひとりといわれているのが、京都・島津医院医院長で小児科医の幸寺恒敏先生です。幸寺先生によると、過去来院したアレルギー患者のうち、3分の1は何らかの食品添加物、あるいは医薬品添加物、農薬・殺虫剤など化学物質の過敏症が関係していたそうです(下に示したのは、幸寺先生による症例の報告。化学物質を除去した生活によって、アトピー性皮膚炎が軽快した例ははかにも数多い)。 自動車の排気ガス成分であるNO2(酸性雨にも含まれるといわれている)は、鼻の粘膜を損傷して鼻や気管の粘膜からの物質の侵入を促進したり、活性酸素により抗原の反応性を高めたりします。また、合成洗剤や医薬品の吸収促進剤として使われている界面活性剤(水道水からも検出されることがある)には、消化管からの物質の吸収を高める作用があり、さ削ヒ管の粘膜からも本来ブロックされるべき物質が吸収されやすくなっています。こうして大気や水の汚染が、私たちがアレルギーを発症する下地をつくっていることも、幸寺先生は指摘しています。 最近の動物実験では、致死量の数百万分の一ないし一千万分の一という、それだけでは何の影響も観察されない微量の農薬をあらかじめ摂取させることで、花粉によるアレルギー反応が強くなることが分かっています。化学物質過敏症といっても、単に化学物質をアレルゲンのひとつとしてとらえるだけでなく、化学物質の氾濫がアレルギー発症の根本的な下地になっているという点により注目する必要カであるかもしれません。 ★アトピーに代表されるアレルギーの激増は、超複合汚染の結果のひとつ というのは、愛知照常滑市の山田医院院長である、山田哲男先生。山田先生は開業以来、栄養士の夫人、紀子さんとともに産前産後の食事・生活指導を徹底して、新生児のアレルギー予防に力を注いでいる産婦人科のお医者さんです。 「最近、子どもたちのからだに異変が起きてるといわれているでしょう。小学生のうちから成人病になったり、中高生で動脈硬化を起こしたり。近視や、低体温の子も増えてる。こういうことも、アレルギーが増えていることと根っこは同じですよ。そして、輸入小麦や大豆でやったポストハーベスト農薬による″人体実験″を、今度は主食の米でやろうというのだから…。今後はますます、こういう現象に拍車がかかるでしょうね」 山田先生によると、昭和60年の開業当初は、アレルギー体質の指標のひとつといわれているIgE値が5U/ml以下という妊産婦さんが多かったそうです。それが63年以降から、どんどん平均的にIgE値が高くなっていって、すぐに5U/ml以下の母親のほうが珍しくなってしまったといいます。 その頃、知り合いの小児科医から「重症のアトピー性皮膚炎の子どもが増えている。生まれる前からの予防に取り組んでほしい」という話があったことをきっかけとして、山田医院ではアレルギーに関する集団指導や退院時の指導を行うようになりました。 ★食生活の急激な変化が≠烽スらした影響 「現在は妊娠初期から、より徹底してIgE値の検査や問診を行ったり、食物日誌をつけてもらうなどして、個別指導をしています。そして、除去食や回転食をしてもらったり、添加物や農薬、合成洗剤など化学物質を避ける努力をしてもらう。その結果、かなりアトピーの発現が減っているという手ごたえがあります。乳児湿疹の発症も、大分減りましたし。こういう結果を見ていますから、私は産前産後の予防には、かなり効果があると考えているんです」と、夫人の紀子さん。山田医院で栄養士とラマーズ法のインストラクターを兼任している紀子さんは、私たち日本人の食生活の変化にも、アトピー性皮膚炎などのアレルギーが増えた原因があると指摘しています。「昭和35年以降に生まれた母親は、学校給食が確立した時代に育ったこともあって、いわばアレルギーになるような食事をしてきたんです。でも最近は、その傾向がますます進んでいますね。旬は失われ、輸入食品が氾濫している。多くの人は好んで加工食品を食べ、外食に出かけます。家庭料理にしても、いわゆるレストラン料理かフライパン料理のオンパレードで、油、小麦、卵、乳製品、そして砂糖の摂取ががぜん増えた。私たちは、私たちの祖先がどういうものを食ベてきたのか、もっと考える必要があると思いますよ」 ★アトピーは時代の病 そして警告の病 開業して9年になる山田医院でも難産、流産や先天性異常が増え、人類の行方について考えてしまうことも多いと山田先生は言います。 「今、ガンで死ぬ人が増えてるのも、健康な人間の免疫力なら抑え込めるガン細胞を、増殖させるからだになっているということでしょう。同じように、地球自体の本来持っている自浄作用ではコントロールできないくらい、生態系の破壊が進んでいるといえるんじゃないでしょうか。そうして、地球全体がアレルギーという自己免疫疾患を病んでいるのが、今の時代かもしれない。その地球の子どもである僕たちに、いろいろな症状が出てこないはずがないですよ。これに対して、やるべきことをやっていかなければ、人類に21世紀があるかどうか、本当に分からないと思いますね」 山田先生の言うように、急増しているアトピー性皮膚炎は、こんな時代に起こるべくして起きている、いわば警告の病なのかもしれません。 山田紀子(やまだ・のりこ)1950年愛知県生まれ。山田医院で栄養士とラマーズ法インストラクターを務めつつ、常滑市議会議員として多くの社会問題に取り組む。著書に「赤ちゃんが危ない」(光勲土)など。 山田哲男(やまだ・てつお)1946年東京都生まれ。待合室に「患者の権利宣言」を掲る山田医院の医院長として知られる。産婦人科医。著書に「医者のえらび方でいのちが決まる」(二期出版)など。
山田医院ではアレルギー予防のため、食物日記と問診表を参考に、食事の取り方や生活上の注意を個別に指導している。 ★求められているのは私たちの暮らし、社会を変える努力かもしれない 関西アトピーネットワークは89年の結成以来、アトピー性皮膚炎の子どもたちへの対応を求めて保育所や学校、行政への働きかけを中心として、さまざまな活動をしてきた市民団体です。こうした活動によって、以前はアレルギーがあると入所自体が難しかった大阪府の保育所で、弁当持参の許可はもとより、3大アレルゲンを除去した給食が提供されるようになるなど、大きな成果をあげてきました。「アトピーの患者さんから、よく相談されるのは『いい医者はいないか』、『いい専門病院はないか』ということなんです。でもアトビー性皮膚炎というのは、いい医者がいればそれだけで治せるという病気ではない。専門的な知識や技術に支えられたスキンケア、食事、ライフスタイルの指導から心理カウンセリングまで含めた、トータルをケアが必要な病気なんです。でも、そんなことができる病院はなかなかありません」 多くのアトピー患者が必要としているトータルな医療的ケアーが、ほとんど受けられていないという現状。これは、たったひとりでアトピーと向き合わざるを得ない状況に追い込まれている患者さんが、たくさんいるということを意味します。 関西アトピーネットワークが行ったハガキによる聞き取り調査によると、症状が悪化して学校や勤めなどの社会生活が送れなくなり、家に閉じ込もつて日々を過ごしているような深刻な例も含めて、成人アトピー患者が全国に相当数いることも分かっているそうです。 こういった状況のなかで、大阪府は関西アトピーネットワークの要請を受けて、94年度、全国初の成人アトピー実態調査を行うことを決定したそうです。 ★ステロイド外用剤をめぐるジレンマ そして、この思春期以降の成人アトピーの問題を考えるときに、忘れるわけにはいかないのが、ステロイド外用剤の問題です。 ステロイド剤は根本治療にはならない薬ですが、だれに対しても、少なくとも最初のうちは一番効果のある薬だといわれています。 しかし、アトピー性皮膚炎でこの薬を使うと、どうしても長期間使用することになってしまいがち。そして、長期間使用することで、必ず副作用の問題が生じてしまう。さらに、長期間使用していた患者が、ステロイド剤の使用を急にやめると、症状が急激に悪化する″リバウンド″という難題まで抱え込むことになってしまうのです。 「安易に使われるべきでない薬だと思います。特に、食事療法やダニなどに対するケアで症状の改善が可能な乳幼児には、使うべきでない。でも、『絶対にステロイドはいけない』といってステロイド恐怖をあおると、今度はリバウンドや民間療法の被害が増えてしまうという面もあるんです。症状がつらい。でもステロイド剤はもう使えない、使いたくないとなると、そういう患者の心理につけ込む悪質な民間療法も、なかにはあって…。そういうものは、3カ月使ってみれば、その人に合うかどうか大体分かるはずなのに、長期契約やまとめ買いをさせようとする。それでなくても『これをやれば必ず治る』と言いたがる療法家は多いですね。だれにでも効く療法はないのに」 要するに、ステロイド剤に頼るのも民間療法にすがるのも、それがすべてになってしまうと危ないと、池田さんは言います。「アトピー性皮膚炎を治そうとしたときに求められているのは、食事を、医者との、薬との、病気との付き合い方を、ライフスタイルを変えていく努力ではないかと思うんです」 ★アトピーと向き合うことは私たち自身と向き合うこと そのために関西アトピーネットワークでは今、″アトピー・カウンセリングセンター″を作ろうと企画しているそうです。それは患者主体のカウンセリング・システムと療養所を合わせたようなものになるはずだと、池田さんは構想しています。 アトピー性皮膚炎について考えていくなかで、実にさまざまな、多くの問題が見えてきました。私たちの皮膚、私たちのからだに生じているこの異変が、大きな必然によってもたらされたものだということは、間違いありません。この病気と向き合うことは、まさに自分自身の暮らし、そして今の社会と正面から向き合うことにはかなりません。 そして、この病気を治そう、なくそうと努めることが、どうやら私たち一人ひとりのライフスタイルを変えることから、世の中を変えること、そして地球を癒すことにも、つながっていくことになりそうです―。 ★ステロイドの種類と副作用 池田道則(いけだ・みちのり)1947年京都府生まれ。「関西アトピーネットワーク」代表。著書に「あぶないアトピー治療法」(三一書房)など。 ★千葉先生に聞く―アトピーとどう付き合っていくか ★成人患者も含めて、アトピー性皮膚炎が急増していますが…。 私の外来にもじんましんやアトピー性皮膚炎をはじめ、皮膚のトラブルを訴えて来る方が大勢います。近頃はぜんそくや鼻炎の方よりも多いですね。話を成人型のアトピー性皮膚炎の問題点に絞りますが、思春期以降のアトピー性皮膚炎は、小児のそれとはかなり違います。まず成人の場合は原因も複雑で、すでに色々な治療方法も試していますでしょ。自然治癒が期待できないんです。それに脱毛や白内障といった皮膚以外の合併症もありま 子どものアトピー性皮膚管大きくなるほど治療にかけられる時間が少なくなりますが、成人ではそれがもっとひどくなります。勉強や仕事を優先せねばならず、病気を治すのは後回しになってしまうんですね。 ★ステロイド剤の副作用の問題について、どうお考えですか? 医師側の問題点としてステロイド剤の使用にあたって塗り方や副作用の説明が十分でなかったこと、薬剤の効能が良いためにほかの併用療法や根治療法を深く検討しなかったことなどが挙げられますが、患者さんの側にも医師の指示を守らなかったとか、症状が少し落ち着くと通院しなかった、軟膏が薬であるという自覚に乏しかったなど、反省すべき点があるように思います。 最近、副作川を恐れるあまり使用を拒んだり、独断で使用を中止してリバウンドを引き起こす人が増えてきたのが心配です。乱用は慎むべきですが、安易にステロイド剤を中止すると抑えられていた症状が噴き出すことがあるので注意が必要ですね。単にステロイド療法を否定するのでは問題は解決しません。いかに上手に使うかが、問題なんです。 医者が出すステロイド外用剤にはラベルが貼っていないものもある。またステロイド入り外用剤は薬局でも簡単に買える。 ★それではステロイド剤はどう使えぱよいのでしょうか?また現在使用している場合は、具体的にどう減らせば良いのでしょうか? 症状の経過には波がありますので、再燃を予防し、早めに処置することが大切ですね。外用薬にもステロイド剤・非ステロイド剤をはじめ、抗生剤入り、尿素入りなど種類がありますので、皮膚の状態や炎症の程度に応じて複数の外用薬を処方してもらい、あらかじめ用途や使用方法を尋ねておくと良いでしょう。改善したら医師に相談してランクを落とすのですが、症状が落ち着くと再来しない患者さんが多いことが問題です。状態の悪いときはステロイド剤の減量・離脱はできません。状態が良いときこそが減量のチャンスなのです。気管支ぜんそくも同様ですが、発作を治すのは本当の治療ではありません。発作が起きないように指導するのが治療なのです。アレルギーの治療はカゼや虫刺されと違って「苦しいときの神頼み」ではダメなんです。 ★民間療法について、どうお考えですか? ★先生はアトピーをどう考え、どう対応しているのですか? 患者さんは皮膚以外にも心身の歪みを持つことが多いので、目に見える苦痛を取り去ると同時に、目に見えない悩みを軽減させる努力が必要だと思います。時々、自分の学問の知識、あるいは守備範囲からはずれた治療で改善する人もいるので、落ち込んでしまいま ★成人の重症例では、家に閉じ込もっている人もいるそうです。 千葉友幸(ちば・ともゆき)1952年、東京都生まれ。東京医科大付属病院小児科医師。日本小児科学会および日本アレルギー学会認定医・同評議員。「アレルギーが治らない理由」(産調出版)、「アトピッコのための回転食クッキング」(講談社)など、著書多数 |
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