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クスリのリスクを考える PART2 取材・文/和郎
★痛みは身体の異常への警告反応といえる。 痛みとは、誰にとっても嫌なものです。痛みなんかなくなってしまえばいいのにと思うのも、ごく当然のことなのですが、果たして本当に痛みは「悪者」で、私たちにとつて「百害あって一利なし」というべきものなのでしょうか。鎮痛剤とはその名の通り「痛みを鎮めるためのもの」言い換えれば、鎮痛剤について考えるためには、まず痛みとは何かを理解するところから始めることが必要なのです。安易に薬を使うことの問題点を指摘してい 「痛みとは何かということですが、何もないところに痛みが起こることはあり得ません。痛みとは、身体に何かが起こっている警告反応だということができます〈仮に、骨折しても痛みがなかったとすれば、骨が折れたまま放置することになってどんどん症状を悪化させることになります。虫垂炎にしても、痛みがなければ知らないうちに病状が進行する恐れがあります。極端な例としては、先天的に痛覚を感じる機能が失われた子どもが生まれるということもありますが、こうした子どもは20歳までは生きられないといわれてきました。痛みは症状としては嫌なものの、なければ逆に困るものなのです。痛みがあるからこそ、自ら安静を保とうとするわけで、また治療を受けるきっかけともなります。痛みは、病気を治すための大切な仕組みともいえます」 痛みは、あなたの身体にとってマイナスのものではなく、むしろプラスというべきものなのです。このことをまずしっかり頭に入れておいてほしいと思います。では、そんな私たちの身体にとって大切な痛みを、市販の鎮痛剤で取り去ろうとしたら、どうなるのか‥・。「痛みは放置しておいても、自然に治まることが少なくありません。そうなれば、痛みの原因であった何らかの身体の異常がなくなったことが分かります。逆に、放置していて窟痛みがひどくなっていったとすれば、痛みの原因として、もつと深刻な病気が隠されているのではないかという予想もできます。ところが、とにかく痛みさえなくなればいいと考えて、鎮痛剤を飲んだりすると、それによって、痛みの原因である病気が表に出ないことにもなりかねません。その結果、気がつかないうちに病状を悪化させることにもなりがちです」(杉山先生) 痛みにとって鎮痛剤は、救世主と思いきや、逆に敵にもなりかねないということです。痛みについては、次のことも知っておいてほしいと杉山先生はおっしゃいます。「それは、痛みは単に身体だけの問題ではなく、精神的、社会的要因も大きいということです。火事場の馬鹿力という言い方がありますが、夢中で何かをやっているときには、大ケガをしても痛みを感じることなく、冷静になってから急に痛みを感じ始めるということもよくあります。 私が患者さんと接している経験からいっても、ガンではないかという不安を持っている患者さんは、痛みを訴える傾向が強いのです。そういう患者さんに対しては、鎮痛剤を使うのではなく、ガンの不安を取り除いてやるほうが、はるかに痛みを取り去る効果は大きいのです。医者にとっても、決して何が何でも鎮痛剤を使うということではないのです」 杉山孝博先生 ★よく効く鎮痛剤には大きな副作用の可能性が これは、特に鎮痛剤だけに限った話ではないのですが、薬には必ずといっていいほど副作用があります。薬と付き合うときには、決してこのことを忘れてはいけません。「薬で病気を治すというのは、毒をもって毒を制するやり方だということができます。つまり、薬とは人間の身体にとつては毒、異物なのですから、副作用があるのはむしろ当然のことなのです。しかも私の経験からいえば、よく効く薬ほど副作用は大きいのです。これは特殊な例ですが、関節の痛みが激しい患者さんに鎮痛剤を授与して、劇的に効果があったことがありました。ところが、それから1週間足らずのうちに、胃かいようができて胃から大量出血してしまったのです。これは、明らかに鎮痛剤による副作用です」(杉山先生) この例は、病院で使っている鎮痛剤だからで、薬局で売っている鎮痛剤にはそんな心配はないのでは、と思っている人も少なくないかも知れませんが、それは少し認識が甘過ぎます。「市販薬の歴史を振り返ってみると、広く使われていた薬がいつしか消えていった、という繰り返しであることがよく分かりますが、それは副作用によるものです。現在使われている市販薬にしても、これから消えていく運命にはないと、誰も保証することなどできません。言い換えれば、今飲んでいる薬が、将来副作用となって返ってくる危険性は十分あるのです。鎮痛剤も、安易に飲むことは絶対に避けるべきです。市販の鎮痛剤を飲むにしても、あくまでも自然治癒力の働きを助ける範囲内で、ということを原則にしてほしいと思います」 (杉山先生) ところで、痛みを感じるというのはどういう仕組みによるものなのでしょう。例えば指先を切ったり、のどに炎症を起こして痛い、などというときには、瞬時に痛みを感じているように思うはずですが、身体の中ではそれなりの仕組みが働いているのです。具体的にいうと、身体のどこかに痛みの刺激が与えられると、痛みの物質(発痛物質)と痛みを増強する物質が生じます。物質名としてぜひ覚えてほしいのが、プロスタグランジン。プロスタグランジンは、痛みの物質であると同時に、痛みを増強させる物質でもあって、つまりは一人二役。痛みのキーマンというべき物質なのです。一方痛みの刺激は、身体各部の受容器から、脊髄視床を経て大脳へ達することで、痛みとして感じられることになります。 ★薬局で売っている鎮痛剤なら副作用がないというのは大きな誤解 痛みを感じる仕組みが分かれば、その仕組みのどこかに働いて、痛みを感じさせないようにすることを考えればいいということになります。「当然、そういう考え方に基づいて鎮痛剤は作られているのです」とおっしゃるのは、帝京大学薬学部医薬情報室で幅広く医薬情報の提供を行っている堀美智子先生。鎮痛剤のなかで、末期ガンなどの強烈な痛みを抑えるために使われるのがモルヒネで終末医療には欠かすことができないものです。「モルヒネは脳や脊髄で痛みを止めるタイプの鎮痛剤で、中枢性鎮痛剤という形でまとめられています。モルヒネは麻薬ですから、それなしではいられなくなる薬物依存症が最大の副作用であり、また、ほとんどの人に便秘の副作用が出ます。従って、モルヒネを使用する場合は下剤を使うのが一般的です。 モルヒネが鎮痛剤として効くということは脳や脊髄の中にモルヒネの受容体があるということです。「そう考えて探してみると、実際にモルヒネの受容体が見つかりました。しかしよく考えてみると、人間の身体はモルヒネが入って来るようなことは予測していないのです。それなのに受容体があるいうことは、本来からだの中にそれにくっつく物質があるということで、それを探していたらエンドルフィン、エンケファリンという物質が見つかりました。これらは鎮痛作用を持っている物質で、針灸によって痛みを取り去る療法は、針や灸の刺激によって、こうした物質を増加させるというやり方なのです」(堀先生) このほかに、痛みを止めるための療渉として神経ブロック療法というのがあわます。これは、局所麻酔剤を使うこと「よって、脊髄へ痛みを伝える神経の働きを一時的にブロックする療法です。 「さらに、痛みの物質で、かつ痛みの増強物質でもあるプロスタグランジンの合成を阻害し、痛みを取り去るというやり方があります。市販の鎮痛剤はすべてこのタイプだということができます。このタイプの鎮痛剤は、ピリン系と非ピリ系に大別することができます。ピリン系はイソプルピルアンチピリンを主成分としたものでよく効くのですが、その分、ピリンアレルギーなどの副作用もあるため、市販薬としては数が少なくなっています。非ピリン系のほうは、アセトアミノフエン、アスピリン、エテンザミド、イブプロフェンが主成分となっています。これらの主成分に、効き目を強くするは眠成分であるアリルイソプロピルアセチル尿素やプロムワレリル尿素、逆に眠気を取り去るカフェインなどが組み合わされるのが一般的な形です」 (堀先生) 堀美智子先生 「くすりの副作用がわかる本」吉成昌郎・ ★非ピリン系の鎮痛剤も当然副作用はある ピリン系、非ピリン系では、ピリン系のほうが怖い、逆にいえば、非ピリン系は副作用の心配が少ないのでは、と思っている人が少なくないかも知れませんがそんなことはないのです。「アスピリン、エテンザミド、イブプロフェンは副作用にも共通点が多いので、最も古くから使われているアスピリンを例に取って説明することにします。アスピリンはプロスタグランジンの合成を阻害することによって鎮痛作用をもたらすものですが、プロスタグランジンには胃の粘膜を保護する働きもあるのです。その働きもなくなってしまうので、副作用として消化性潰瘍や胃腸からの出血が起こりやすいのです。水なしで薬を飲んで、薬が食道に溜まるようなことがあれば食道に潰瘍ができる心配もあります。また、血液に現れる副作用として、頼粒球減少、貧血、再生不良性貧血、血小板機能障害なども挙げられます。15歳未満の子どもが、インフルエンザや水痘などのウイルス性の病気にかかっていてアスピリンを飲んだときには、ライ症候群の恐れが出てきます。ライ症候群は嘔吐、意識障害、けいれん、肝機能障害を発生させ、死亡率も高い恐ろしい急性疾患です。また、妊娠末期の女性がアスピリンを長期間飲むと、胎児の動脈を収縮させる、胎児循環持続症という副作用が起こることがあります。発症すれば死亡率20〜40%という非常に怖い副作用です。特に子どもや妊婦は、鎮痛剤に対して慎重でなければいけません。このほかにもアスピリンぜんそくや腎障害などの副作用も起こし得ます」(堀先生) アセトアミノフエンについては、プロスタグランジンの合成阻害が中枢部で行われるため、胃腸障害の副作用は少なくなっています。ただアスピリンなどは鎮痛、解熱、抗炎症の3つの作用があるのに対して、アセトアミノフエンには抗炎症作用はほとんどありません。「アセトアミノフエンで問題となる副作用としては、まず低体温が挙げられます。子どもの熱が下がらないので不安になってまた飲ませた、などという場合、子どもが低体温となって身体が冷たくなり、慌てて救急車を呼んだというケースも決して少なくありません。もうひとつ、飲み過ぎたときには肝臓障害も心配されています。症状はすぐにではなく、1週間後くらいに出てきて重症だということがあり得ます。 子どもとか老人が間違ってアセトアミノフエンを飲み過ぎたというときには、その場では何でもなくても、すぐに医者の診察を受けるべきです」(堀先生)
★リウマチの痛みでさえ鎮痛剤なしで解消可能 鎮痛剤は、ついそれに頼ってしまう依存症、連用することで効かなくなり自然に飲む量が増えていくという心配もあります。もちろん副作用のことも知り、賢く利用することまで否定するものではありませんが、もし鎮痛剤と無縁であることが可能なら、それが理想なのはいうまでもないことです。そこで、西式健康法(西医学)の権威、渡辺医院院長・渡辺正先生に、鎮痛剤を使わずに痛みを取り去る方法を教えていただくことにします。
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