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14. オゾン層の破壊
   紫外線があなたを襲う



オゾン層の破壊

取材・文/小島 あゆみ 


★紫外線があなたを襲う

 南極のオゾンホールは、年々大きくなっています。もしオゾン層が壊れてしまったら、私たちは生きていくことができません。降り注ぐ有害な紫外線から子どもたちを、地球に生きるすべての生物を守るために、絶対残さなければならないオゾン層。

 破壊の本番は、まだ始まったばかりなのです。

 オゾン層の破壊がもっと進んだら、海辺で水着姿になることもできなくなるかもしれない(写真/関戸勇)

 ここ数年、オゾン層という言葉をよく耳にします。聞く割には、それがどんなものか知らないのではありませんか。実際、目には見えないから、しかたないかもしれません。でも、オゾン層があるから、私たちは生きていけるのです。そのオゾン層が、今、破壊されています。

★オゾン層は生命を守る「地球のコート」

 オゾン層が壌されると、今までオゾン層に吸収されていた有害な紫外線が地上にまで届くようになります。もしオゾンの量が10%減ると、全世界で皮膚ガンが年間30万件、白内障が160〜175万件増えるといわれています。また、感染症が悪化することも心配されています。もちろん人間だけでなく、動物や植物への影響も懸念されているのです。

 オゾン層は地球全体を覆って生物を守っている、いわば「地球のコート」。0℃で1気圧に圧縮すると、わずか3mの厚さにしかなりません。このコートが薄くなり、穴が開いたのです。

 オゾン層を作っているオゾン(03)は、3つの酸素原子がくっついたもの。大気中で紫外線によって作られています。地表に近いところから雲の上まで広がっていますが、地表15〜30km付近が最も濃度が高く、層になっており、オゾン層と呼ばれています。

★85年、オゾンホール発見 コートに穴が開いた

 オゾン層が大きな話題になったのは、1985年頃。イギリスのファーマンらが南極の上空でオゾンが、年々減少していると発表したからです。気象庁の昭和基地での観測データやアメリカ航空宇宙局(NASA)の衛星観測結果からもそれは裏づけられ、円形にオゾン濃度が低くなる場所が見つかって、オゾンホールと呼ばれるようになりました。

★どんどん大きくなるコートの穴

 大気は赤道付近から上昇し、南北の半球に分かれ、南極と北極あたりで沈み込みます。「南極では毎年9月から11月頃に極点を中心に渦を巻き、ちょうどエアカーテンのような働きをして空気の入れ換わりが少なくなります。それで外からオゾンが入って来なくなり、渦の中のオゾンが壊れるとオゾンホールができるのです」と気象庁・オゾン層解析室長の伊藤朋之さんは説明します。

 オゾンホールは「その発見以前に予測されていたオゾンの減少と比べて、10倍のスピードで巨大化して、理論自体を修正していかなければならなくなった」と振り返るのは、気象研究所・物理気象研究部の佐々木徹さん。

 このオゾンホールは、昨年、観測以来最大になりました。南極大陸の1・7倍の大きさ、つまり地表の4・7%になります、またオゾンの破壊量も最大になり、南半球全体のオゾンの5%の巌、8000万トンが破壊された計算になります。そして、オゾンの濃度がほとんどゼロという部分があるのも観測されました。また、年々オゾンホールが現れてから消えるまでの期間も長くなっています。

★便利なフロンがオゾン層を壌している

オゾン層を壊す主な原因はフロンという物質です。

 フロンは60年ほど前にアメリカで作られました。フロンという名前は高圧ガス取締法で使われた和製英語で、正式にはクロロフルオロカーボン(CFC)と呼ばれます。塩素(クロロ)とフッ素(フルオロ)と炭素(カーボン)からできた化合物です。常温では、気体と液体のものがあります。

 人間への毒性はほとんどなく、温度などの変化にも強く、また燃えにくくて爆発性もない、金属を腐食させず、電気を絶縁する力も大きいなど、化合物としてはすぐれた性質を持っています。「夢の化学品」として、さまざまな場所で使われるようになりました。現在は、冷蔵庫やエアコンの冷媒、ウレタンフォームなどの発泡剤、スプレーなどの噴射剤、精密機械のICなどの洗浄剤として使われています。

 日本では洗浄剤として使われる量が多く、91年現在、主なフロン5種の使用量の約半分を占めています。フロンガスを使ったスプレーは最近見かけなくなりましたが、それでも3%ほどあります。

 フロンは種類がいろいろ。代表的なものは上の表の通りです。最初に作られたフロン11、12のほか、l13、l14、115などがあります。また、同じように塩素を含む四塩化炭素、トリクロロエタン、臭素を含むハロンもオ、ゾン層を破壊することが分かっています。

★フロンの埴素原子1個が10万個のオゾン分子を破壊

 フロンは10年ほどかかって上昇し、40kmくらい上空の成層圏で紫外線に当たって初めて分解されます。そして、そのときにできる塩素原子がオゾンの分子を壊します。塩素原子1佃で10万偶のオゾン分子を壊すといわれています。オゾンは大気中で作られていますが、フロンの分解で壊される量の方が多いので、全体量が減っているのです。また、大気中に漂うさまざまな粒子(エアロゾル)の表面で、この反応が進むことが分かりました。南極では、この反応が小さな氷の粒の表面で起こっています。

★なかなか消えないフロン。オゾン層破壊はこれからが本番

 フロンの安定性はたいへんすぐれたもの。それだけに、悪さをするときの影響力もすごいのです。分解して3分の1になるまで百年もかかります。完全になくなるには、それこそ気の遠くなるような時間が必要です。今までに倣われたフロンのうち、90%以上はまだオゾン層に届いていないといわれています。オゾン層の破壊はこれからますます進むのです。

 フロンを使うのは、主に北半球の中緯度にある先進工業国。そこから南極に流れ、上空でオゾンを大量に壊したのです。

 オゾン層の破壊は、南棟だけの問題ではありません。北極でも10年間で20%オゾンが減少しています。また、私たちが住んでいる北半球の中緯度地域でも5%減っているのが現実です。

★オゾン層の破壊 生命を脅かす有害紫外線

昨年アメリカで開発された「日焼け警報バッジ」。日光に当たるとブルーの部分が緑、そして黄色に変わる。黄色になったら要注意というわけ。アメリカでは紫外線の害はここまで切実になっている。c XYTRONYX/ANGELI-AMERICA/ORION PRESS

皮膚ガンの一種の基底細胞ガン。皮膚ガンは日光にさらされる顔にできることが多い。写真を提供してくださった東海大学医学部皮膚科の大城戸宗男教授=左の写真は「かってレーガン大統領が鼻の横に皮膚ガンができたように、白人にとって皮膚ガンはポピュラーな病気」と語る(写真)

 オゾン層が破壊されるとどんなことが起こるのでしょぅか。
今、最も懸念されているのは、有害な紫外線の量が増えることです。

★オゾン層の破壊で有害な紫外線が増える

紫外線は、波長の良さによって、ABCの3種類に分けられます。紫外線Aは波長が一番長く、オゾン層に吸収されることなく地上に届きます。紫外線Bは、オゾン層に一部吸収されます。波長が最も短い紫外線Cは、オゾン層で吸収されて地表には届きません。

 問題になっているのは紫外線B。これは、サンケア化粧品によく出て来る「UV−B」のこと。日焼けでいえば、肌の表面を赤くし、水ぶくれを作るのが紫外線A。人体はメラニン色素を作り出して抵抗します。これに対して、紫外線Bはメラニン色素に吸収されますが、吸収されなかった分が、肌の内部にまで浸透して遺伝子を傷つけ、ガンや白内障の原因 になるとされています。オゾン層の破壊によって、オゾン層に吸収されていた分までが地表にやって来て、悪さをすると考えられています。

★皮膚ガンはこの10年間で2倍くらいに増えている

 東海大学医学部皮膚科の大城戸宗男教授は、さまざまなデータから、紫外線の害を語ります。まず皮膚ガン。87年にアメリカで白人について調査をしたところ、シアトルからハワイ・カウアイ島までの間で緯度が低くなるほど発ガン率が高くなりました。「つまり紫外線の強い地域ほど皮膚ガンになりやすいのです。」と入城戸教授。また、オーストラリアでは、イギリスから移住して来た世代とその子どもの世代に当たるオーストラリア生まれの人たちを比べると、後者の発ガン率は2倍です。人種が同じでも紫外線により長く当たった方がガンになりやすいということです。

 カナダ・バンクーバーでは、73年から87年の15年間に皮膚ガンの発生率が2倍という驚異的な増え方をしています。

 皮膚ガンは白人に多いといわれていますが・ハワイ・カウアイ島の日系人の発ガン率は高いのです。「日本人だからといって安心はできません。環境次第では同じように危険なんです」

 日本では皮膚ガンに関するデータは少ないのですが、13の大学病院で調べたところ、10年前と比べて増えているところがほとんどです。入城戸教授は「10年前よりl・5倍から2倍くらい増えているのでは」と言います。

 皮膚ガンが増えた理由として、入城戸教授は「まず聖に寿命が伸びて、紫外線に当たる総量が増えたこと。もうひとつはアウトドアで過ごすライフスタイルに変わってきたこと」と言います。

  このうえ、オゾン層の破壊によって紫外線量が増えれば、皮膚ガンはもっと増える可能性が高いのです。

  国連環境計画はオゾンが1%減ると、紫外線が2%増え、皮膚ガンが2・6%増えると発表しています。かつてのデータでは、死亡率の高い悪性黒色腫(メラノーマ)は除かれていたのですが、現在はこれにも紫外線の影響があると考えられています。また、一部のガンの前段階である日光角化症も増えています。

★白内障を増やし免疫力を落とす紫外線

 白内障は目の水晶体が濁り、物が2つに見えたり、視力が落ちたりする病気。「手術で治るのですが、世界には手術を受けられない人もたくさんいます。国連環境計画ではオゾンが10%減少すると、世界で白内障の患者が160〜175万人増えると予測しています」

 免疫機能の低下について、現実にどういう病気がどのように増えているかはまだよく分かっていません。しかし、専門家の問では、感染症にかかる人が多くなったり、症状が悪化することが指摘されています。

 ほかにも、膠原病の一種である全身性エリテマトーデスなど日光によって悪化する病気についても心配されています。「紫外線の害は、決して対岸の火事ではない」と入城戸教授は言っています。

★植物や動物にも被害が出る可能性

 また、紫外線によって影響を受けるのは、人間ばかりではありません。

 環境庁国立環境研究所・新生生物評価研究チームの近藤矩朗さんが、80年代後半に紫外線とキュウリの成育との関連を実験しました。2鉢のキュウリのうち、一方には紫外線Aだけを、もう一方に自然光より少し短い波長を含む紫外線Bを当てました。結果は、上の写真の通り。

紫外線Bを当てたものは葉が小さく、表面の緑は濃くなり、斑が入ってテカテカしています。紫外線Aだけを当てたものは普通に育っています。「自然の条件で実験したわけではないのではっきりとは言えませんが、紫外線Bが強くなると、植物の成育状況に何らか影響があるのでしょうね」と近藤さん。

 別の実験で、紫外線と共に亜硫酸ガスを当てた場合、キュウリが枯れてしまいました。大気汚染がひどいなど、ほかのストレスによって、紫外線の害が進むと考えられます。

 また、紫外線によって生態系の一番基礎になるプランクトンが減るともいわれています。そうすれば、魚が捕れなくなるかもしれません。また、作物の収穫量が落ちるなど、人間の食料の供給にも問題が出てきます。生態系が変わることすら予測されているのです。

★素材にもダメージ?予測しきれない影響が

 本やプラスチックなどの素材も強い紫外線に当たることで、変色したり、弱くなったりします。

 また、気温や天候など気象にも関わります。紫外線が増えると化学反応が進み、大気中に有害な物質が増えると考えられています。

 オゾン層の破壊とそれによる紫外線の増加の影響は、まだよく分からない状況です。でも、実際に何かが起こってからでは遅すぎます。オゾン層破壊の怖さは、もうすでにじわじわと忍び寄っているのかもしれません。

 オゾン層に穴があいたり、厚みがなくなると、有害な紫外線が入ってくる。心配なのは南極だけではない。北半球の中緯度でもオゾンの量が減っている。私たちの便利な暮らし自体がオゾン層を破壊しているのだ。紫外線の害は、長い時間浴びることで蓄積されるだけに注意が必要といわれる

 茨城県つくば市の高層気象台では、毎週水曜日に気球を使ってオゾンを測定している。2kgの気球が、測定器を空に運ぶ。測定の結果は寸時にコンピュータに入る。ほかに札幌、 鹿児島、那覇でも同じ時刻に測っている

★オゾン層の破壊
★私たちは未来に何を残すのか

 青い地球。宇宙飛行士にとっての宇宙服と画しように、生物はオゾン層がなければ生きられない。科学の進んだ現在でも、宇宙服を着て宇宙で生きられるのは数時間といわれている。オゾン層はあとどのくらいもつのだろうか。46億年かけて地球が作った宇宙服に、人間はあっという間に穴を開け、自らの生存をも危椴にさらしている

 このところ、いわゆる「UVカット商品」がたくさん出ています。化粧品のみならず、傘、ストッキング、シャンプーなどさまざま。これも紫外線に対する関心が高まってきた証拠でしょう。

★世界各国で紫外線対策が進んでいる

 気象庁は今年2月から、札幌、つくば、鹿児島、那覇で測定した紫外線Bの量を毎月発表しています。現在のところは増加の傾向は見られませんが、地球全体のオゾンの畳が減っていることから、紫外線が増えることが考えられるため、監視が必要だとしています。

 アメリカやオーストラリアでは、皮膚科学会などが紫外線の強い日は予どもに帽子やサングラスを着用させるようにと呼びかけています。紫外線に対する抵抗力が弱いといわれる白人の多い国、紫外線の強い国では、まさに死活問題です。

 またアメリカでは、5月からフロンを使っている商品には、その旨を表示するようになっています。全廃まであと2年。それでも始めたこのプロジェクトに、アメリカの「本気」と「焦り」が見えます。

★紫外線を浴び過ぎないよう気をつけたい

 では、紫外線の害を受けないようにするには、どうすればいいのでしょうか。

 これについては、医者によって意見が分かれています。大域戸教授は、「必ずサングラスや帽子を着用とまでは、しなくてもいいと思います。普通に暮らしている分には問題はありませんが、紫外線を浴び過ぎない方がいいですぬ。少なくとも40、50代で日光浴をするなんてことはやめた方がいい。ふだん日に当たらない人が急に日焼けして、水ぶくれを作るようなことは避けてほしい」と言っています。また、紫外線の害についての教育や、紫外線の強い日には帽子やサングラスを使う習慣をつけることが必要と力説します。「そうすれば皮膚ガンの増加に歯止めがかけられるのではと願っています」

★フロンを出さないにようさまざまな対策が練られているが

 オゾン層を守るには、フロンを大気中に出さないのが一番。その方法として、

  @フロンを作らない、使わない
  Aすでに作られたフロンを壊す
  B回収して再利用する
  Cフロンと同じような働きをする別の物質を開発する

 の4つが考えられます。

 @のフロンの生産、消雪については、すでに国際的な合意ができています。
「オゾン層の保護に関するウィーン条約」とその実行の段取りを定めた「モントリオール議定書」です(左頁のコラム参照)。

 これを受けて、日本では88年に「オゾン層保護法」が施行されました。フロンの生産の削減や使用者への排出抑制、オゾン層やフロンについて調査や監視する国の義務などを定めています。

 「モントリオール議定書」では、フロン(CFC)は96年に全廃、つまり95年中に生産と消費をやめることになっています。現在、日本では予定よめ早いテンポで削減が進んででいます。ただし、この規制が「効果を上げているのかどうかをきちんと見ていかなければならない」と環境庁国立環境研究所・オゾン層研究チームの中根英昭さんは言います。

 現在Aについては、プラズマ (高度に電離した気体)と反応させる、燃やすなどの実験がされています。しかし設備やコストの点でまだ実用化されていません。

 Bは、一部ではすでに行われています。自動車のエアコンのフロンは、主にメーカーのディーラー系の自動車修理工場で回収、再利用されています。しかし、冷蔵庫やエアコンはメドが立っていません。費用を自治体、メーカー、消費者の誰が負担するかなど難問があるのです。

 Cのフロンの代替品については、さまざまなものができています。しかし、一部は少量ながらもオゾン層を破壊したり、安全性や確実性の点でフロンに劣ったりと欠点があり、研究中です。 

★オゾン層破壊の問題から得た教訓

オゾン層の破壊の問題を考えると、ここには2つの教訓があります。

 ひとつは「完全な物質はない」こと。人体に害がなく、とても便利なフロンは、最終的には人類全体の悪役になりました。すぼらしい物質にも弱点はあり、それはできたときには予測できないこともあると、私たちは身を持って知ったわけです。

 もうひとつは、環境問題への初めての世界的な取り組みとなったこと。ウィーン条約に調印したのは95カ国(92年10月現在)、これだけの国がオゾン層を守るために集まったのは画期的でした。「この間題をきっかけに、大気の化学が調べられるようになったのも進歩ですね」と言うのは東京大学理学部の富永健教授。こうした経験が今後どれだけ生かされるかは、未来の子どもたちへの私たちの宿題です。

★今、私たちができることは何だろうか

 フロンはまだまだ身近です。冷蔵庫の断熱材や、果物の保護用のネットなどには発泡剤として使いますし、冷蔵庫やエアコンには冷媒として使っています。使い捨てや、まだ使えるものを捨ててまで買い替えることは避けたいものです。カーエアコンのフロンを補充してもらうときは不足分だけを足してもらう、廃車にするときには回収している工場やディーラーを探してみるなど、できることはあります。多少不便でも地球の健康を考えて暮らすことが必要になってきました。「地表の面積を世界の人口で割ると、ひとり分はたった半径180m。本来はこの範囲で寝て、食べて、ゴミを処理しなくてはいけない。にもかかわらず、人口の約10%が外にゴミを出し続けた」と伊藤朋之さん。こうしてフロンも放り出され、地球のコートに穴が開いたわけです。

 フロンが製造されてから60年ちょっと。5億年前にできたオゾン層を、人間はあっという間に壊しています。オゾン層の破壊は少なくともこれから百年は続くのです。破壊が進めば、子どもたちはサングラスに帽子、長袖姿が当たり前になるのかもしれません。

 私たちの暮らしの代償を払うのは、未来の子どもたちなのです。

このままオゾン層の破壊が進むと、やがて子どもたちも必ずサングラスをかけなければならない時代が来るのかもしれない

南極のオゾンホールは昨年最大になった。最盛期直前30日間のオゾンの破壊速度も過去最高になり、オゾン層がほとんどない部分も観測されている。オゾンホールが現れてから消えるまでの期間も一番長かった

「ウィーン条約」と「モントリオ−ル議定書」

1985年に開かれた国連環境計画(UNEP)の外交会議で、「オゾン層の保護に関するウィーン条約」が採択されました。これはオゾン層やオゾン層を破壊する物質について、各国が協力して研究を進めること、オゾン層を守るために各国独自の、あるいは共通の対策を実行することを定めています。この条約に基づいて各国共通の対策を決めたものが「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」で、87年に採択されました。

 規制の対象となったのは5種類のフロン(CFC)、3種類のハロンで、それぞれ生産量と消費量を段階的に減らすことが決まりました。しかし、オゾン層の破壊が予想以上に進んで規制を強化することになり、90年にさらに10種類のフロンと四塩化炭素、1・1・1−トリクロロエタンを規制対象に追加、全廃のスケジュールも1・1・1−トリクロロエタンは2005年、ほかは2000年と改正されました。92年には再び改正、ハロンは94年に全廃、ほかは‘96年と大幅に前倒しになり、オゾンを破壊する力が今までの既成物質より小さいフロン34種類を2030年に、代替ハロン1種類を96年にに全廃すること、臭化メチルを91年の生産・消費量より少なくすることが追加されました。この議定春の運用は、環境庁と通産省が担当しています。

大気中のフロンの測定を続けている東京大学理学部の富永健教授



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