・現代の食生活は ・間違いだらけの常識
@ 肉はスタミナ源 ・精製食品だらけの食生活 ・国籍も季節も失われた ・現代の食生活は不完全燃焼 ・家族の食生活診断 ・カタカナ食品を ・これだけは知っておきたい
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“医食同源”という古い中国の言葉は、食べ物と医術はもとを辿れば同じ―― 「日本人の主食は米である」この言葉に疑問を持つ人は、ほとんどいないでしょう。でも現在、日本人が一日にどのくらい米を食べているか知っているでしょうか。 明治時代から大正時代にかけては一人一日358g、お茶碗に約6〜7杯が日本人の平均でした。終戦直後の昭和21年ですら254g、お茶碗で4〜5杯は食べていた計算です。ところが昭和40年頃から米の消費量は減りはじめ、昭和58年には207g、お茶碗に3〜4杯になってしまいました。これは大人から子どもまで含めた全国平均ですから、一日にお茶碗に一杯程度のご飯しか食べないという人も少なくないのが現実です。 赤ちゃんはおっぱいが終わる頃になると、重湯から食べ始めます。病院で手術をした人も、食事ができるようになればお粥から食べ始めます。早く体力をつけるためにステーキや焼肉を食べさせる病院は、まずありません。母親は食事の準備ができたとき、家族に「ご飯だよー」と声をかけます。まさに、食生活の基本は「ご飯」なのです。本来の日本の食事はご飯が中心で、副食はあくまでもご飯を食べるためのものでした。現在のように「お茶碗に軽く一杯くらい」で副食をたくさん食べる時代では、何が主食か分からなくなってしまっています。 ご飯をあまり食べない人の食生活では、朝はパン食が多いようです。主食をパンにするときは、バターやジャムなどをつけ、副食はハムエッグやサラダなど洋風のものになりま ダイエットでご飯を控える人もいますが、実はこれがかえって肥る原因になります。人間が生命を維持するためには、誰でも食事をしてエネルギーを補給しなければなりません。たとえふとんの上にじーっと寝て何もしない場合でも、大人で1400kcal、お茶碗にご飯9杯分くらいのエネルギーが必要です。それをご飯を1日1〜2杯で、副食にカロリーの低い野菜や海藻だけでは、一時体重が減ったとしても長続きせず、お菓子や清涼飲料水につい手が伸びて不足したエネルギーを補うことになります。これらの食品は、ご飯のような満腹感がなく、腹持ちもよくないため、次から次へと食べることになり、結局は肥ってしまいます。 もうひとつ水田の水質保全、治水機能は私たちの生活に深くかかわっています。山がちの日本は、川の流れが急で洪水が起こりやすい地形ですが、水田に雨水が一時たまってから流れることで防いできました。わが国の水田には、人工的に作ったダムをはるかに凌ぐ貯水能力があるのです。また水田にたまった水は少しずつ地下に浸透して、地盤沈下を防いだり、真夏になると水田の水が蒸発して雲を作り雨を降らせます。日本人が米を食べることは、健康面だけでなく、環境を守るという点でも大きな意味を持つことなのです。 かつて日本には、日本の風土のなかで育まれてきた独自の食生活がありました。米や雑穀、いも類を主食とし、季節の野菜や豆類、海藻、魚介類を食べるというものです。ところが戦後の日本の食生活は、欧米の食生活が理想であるという前提で作り変えられ、「(欧米に比べて)たんぱく質が足りない」「(欧米のような先進国は穀類の摂取量が少ないから)ご飯を残しても、おかずをたくさん食べたほうがいい」といったことが、食生活の新たな常識として信じられるようになってしまいました。最近でこそ「動物性脂肪のとり過ぎはよくないので、控えたほうがいい」という風潮になってきましたが、戦後40年以上も栄養教育では、肉、卵、牛乳といった動物性食品を優秀な食物として、たくさんとるように指導してきたのが現実なのです。そして、このことが今の食生活の大きな問題の一つになっています。 実際に、肉の大好きな家族や友人の後でトイレに入っておもわず鼻をつまみたくなるような経験をしたことがないでしょうか。肉食が多くなると、腸内にはウェルシユ菌などの腐敗菌が増え、インドール、スカトール、硫化水素などの物質が増えることが分かっています。これらの物質が悪臭をだします。当然、オナラも臭くなります。 臭いだけならまだしも、それらの有害物質は腸で吸収されることになります。そのことがガンを始めとした、あらゆる病気の根底にあります。アメリカでの調査によると、セブンアドベンテイスト、モルモン教の信者は一般の人たちよりも極めてガンの患者が少ないといいます。彼らは宗教の教えから肉食を一切しません。 そろそろ欧米の食生活が理想という、無意識のうちに信じている錯覚から抜け出して、日本の伝統的な食生活を見直す時期だと思います。 日本の伝統的な食生活の知恵は、人から人、親から子へと何千年にもわたって受け継がれてきたものです。例えば現在の私たちは何の疑問ももたず納豆を食べていますが、よくよく考えてみると、納豆は大豆の腐ったものでしかありません。正しくは?酵というべきでしょうが、腐ったものを最初に食べた人は、大変に勇気のあった人か好奇心の強い人だったかもしれません。どちらにしろそういう人がいたからこそ、私たちは納豆のおいしさを平然と味わうことができます。またフグの多くが猛毒を持っていること、そしてフグの種類によって毒のある部分が違うこと、植物のなかにもトリカブトやハシリドコロといった毒草があることも、長い年月のなかで、たくさんの尊い犠牲者を出したことによって知ることができたのではないでしょうか。私たちが特別な場合を除いて、このような有毒なものを口にしないですむのは、長い年月をかけて蓄積された知識や情報を伝えてきたからです。それを伝統の知恵というのでしょうが、それは人体実験の集積ともいえるはずです。その貴重な教訓を崩壊させてしまった原因が、戦後の栄養教育です。それもわずか数十年という短い期間で急激に変化したため、身体がついていけず、それがさまざまな病気となって現れています。下に食生活の自己診断表を載せました。あなた自身の食生活について、ぜひチェックしてみてください。 栄養素で食生活を考えることが科学的なことだと思い込んできたことも、問題点の一つです。栄養素というのは、食物に含まれている糖質、たんばく質、脂質、ビタミン、ミネラル類のことです。現在の私たちは、食物にはどのような栄養素が含まれているのか、かなりのことを知ることができるようになっています。科学の進歩はすごいものです。 しかしそれらの進歩が現在の私たちの食生活にどのような影響を与えてきたのかと考えてみると、必ずしも良い影響をもたらしたとは言えないように思います。例えば、前のページでもお話したように、長い間「肉は良質のたんばく源」といってきましたが、最近では「動物性脂肪の多い肉類は食べ過ぎないようにしましょう」といっています。イカやタ これと同じようなことはまだあって、ほうれん草は鉄分が多いから貧血にいいという人もいれば、シュウ酸が多いのでカルシウムとくっついて結石になるという人もいる。 何がなんだか、どれを信じていいのか、さっぱり分からない状態になっているのです。左の表で示す通り、食品にはそれぞれメリット、デメリットがあり、「身体にいい食品」が存在しないように、「身体に悪い食品」も存在しません。食品にどんな栄養素が含まれているかを知り、それを参考にするのが悪いのではありません。問題はある一面だけを見てそれを絶対と考え、「小魚にはカルシウムがたくさん含まれているから食べよう」と結論づけてしまうことなのです。これでは、科学的な考え方とはとてもいえません。今の私たちは、栄養素のある一面だけをとらえて善し悪しを判断する、「木を見て、森を見ず」という状態になっているのではないでしょうか。 「栄養素のバランスをとること」が健康のためには大切なことだということを、疑う人はいないでしょう。もちろん栄養素のバランスがとれていることは大切だけれど、実際どのようにすれば、バランスがとれているといえるのか分かりますか? 肉はスタミナ源 肉を食べたからといって筋肉がつくわけではない アルカリ性食品がよい 「野菜はアルカリ性食品だからたくさん食べたほうがいい」とか「肉や卵は酸性食品だから控えたほうがいい」といった言葉をよく耳にします。一見ヘルシーな考え方のように思えますが、本当にその通りでしょうか? 酸性食品、アルカリ性食品とは、ある食品を燃やして灰にしたとき、アルカリ性のミネラル(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)を含むものをアルカリ性食品、酸性のミネラル(リン、イオウ、塩素など)を含むものを酸性食品として分類したものです。しかし食品には今はまだ解明すらされていないさまざまな成分が含まれており、そのなかのミネラルだけを取り上げて、良い、悪いを決められるほど単純なものではありません。前に述べた「肉は良質のたんばく質」「牛乳は完全栄養食品」といった考え方と同じような、錯覚なのです。 牛乳で骨粗鬆症が予防できる 「背が大きくなるように、子どもには毎日牛乳を飲ませています」とか、「女性は骨粗鞍症になりやすいので、朝は必ず牛乳を飲むようにしています」という言葉を、母親たちからよく聞きます。では、牛乳を飲んでいれば骨粗鬆症の心配はないといえるでしょうか? 結論は、ノー。牛乳を飲んだからといって骨が丈夫になることも、牛乳を飲まないから骨がもろくなることもありません。現在、日本には500万人もの骨粗鬆症患者がいて、その数は年々増え続けています。しかしその原因は、カルシウムの不足というよりは、体内に取り込んだカルシウムをうまく利用できないライフスタイルにあるのです。カルシウムを骨に沈着させるためには、筋肉の運動や太陽の光を浴びてビタミンDを取り込むことが必要不可欠です。 ところが現代人の生活は、運動と太陽の光を浴びる時間が少なく、ストレスがいっぱい。ストレスは胃酸の分泌を悪くして、カルシウムの吸収を阻害してしまいます。室内でテレビゲームに夢中になり、夜遅くまで塾通いをする子どもたちも、同じ。 昔の子どもより牛乳などカルシウム たっぷりの乳製品を多くとっている はずなのに、跳び箱に手をついただけで骨折をする子さえいるのです。 菜食主義が理想的 動物性の食品は、一切いらないのでしょうか。 もっとも肉や卵、牛乳、魚だけでなく、煮干しや鰹節までとらない完全な菜食主義を実行できる人は、ほとんどいません。本気で実行したら、そばつゆに鰹節などを使用する日本そば屋さんにも入れません。 なかには、「タンパク質は大豆などからでもとれる」と主張する人たちもいますが、動物性食品の必要性はタンパク質だけをとるためではありません。むしろ、ある種の脂肪やビタミンなどは植物性の食品からはとれないことが指摘されています。 いつかはっきりわかる日がくると思いますが、実際に長期間、完全な菜食主義を実行して、栄養失調で亡くなった人もいるのです。 減塩は健康の秘訣 「減塩」食品のブームは、日本人の死因の上位を占める心臓疾患、脳血管疾患が、塩分のとり過ぎによる高血圧のせいと信じられているからでしょう。1960年頃、脳卒中死亡率が極めて高い秋田県で行われた減塩運動で、高血圧の人が減り脳卒中による死亡が激変したことで、減塩の有効性が認められました。 しかし当時の秋田県では一人当たり1日30〜40gも塩分をとっていたのに対し、現在の日本人の平均摂取量は1日12g(1987年「国民栄養調査」)。大量に塩分をとる人は別にして、塩分の摂取量がそれほど多くないなら、さらに1〜2g減塩するより、仕事のストレスや運動不足という生活環境を改善するほうが、有効なことも多いのです。また塩分が不足すると、食欲不振、倦怠感や疲労感という弊害も起こります。最近は塩の影響を受けやすい 「食塩感受性高血圧」と、それほど減塩の必要がない「非食塩感受性高血圧」という考え方が広がり、「減塩」ですべての人が高血圧を予防できるとは限らないことが分かっています ★精製食品だらけの食生活 これだけさまざまな食品が身のまわりにあふれている今の時代に、栄養失調になる人がいるといっても、すぐには信じられないでしょう。 でも意外と多くの人が現代型の栄養失調になっているケースが多いのです。確かに食べるものはたくさんありますから、食糧難の時代のように食べる量が不足して栄養失調になるのではありません。現代型の栄養失調はビタミン類やミネラル類の微量栄養素の不足によって引き起こされるものです。 ビタミンやミネラルといった微量栄養素は、食べたものを円滑に代謝させるためになくてはならない栄養素です。例えばカルシウムが骨に沈着するためには、ビタミンDと筋肉の運動が必要ですし、ご飯を分解してエネルギーに変えるためにはビタミンBlが必要。微量栄養素が不足していると、いくら食べ物を食べても、体内で有効に使われず、栄養失調になってしまいます。 微量栄養素にはどんな種類のものがあるのか、何が不足しているのかといったことは、まだ分かっていません。かつてはビタミンC不足で壊血病になる、ビタミンBl不足で脚気になるなど、足りない微量栄養素と病気の因果関係が比較的はっきりしていました。しかし今では食品の種類も多く、新しい栄養素の研究が進むなどさまざまな要因が絡み合っていて、何がどのくらい不足しているかすら分からない状況です。微量栄養素が何種類あるかが解明されていないのに、不足している栄養素を知ることなど無理。ですから不足したものを補うのではなく、微量栄養素が不足しないような、食品や調理法を選ぶことが大切です。 ビタミンやミネラルが食品から取り除かれた いったいどうして、これほど微量栄養素が不足するようになってしまったのでしょう。その原因の一つは精製され過ぎた食品が多いことです。あなたの台所を見てください。真っ白な砂糖、サラサラの塩、白米といった、白くてサラサラのものがたくさん並んでいませんか。 その代表的な例が白米です。かつて日本人が食べていた米は、たんぱく質、脂質、各種ビタミン、ミネラルを豊富に含む胚芽がついた玄米や分づき米でした。ところが江戸時代の少し前から玄米の胚芽や糊粉層を取り除いた白米が食べ始められ、明治時代には、今のような形の真っ白な精白米になったといわれています。 玄米はエネルギーが多く、そのエネルギーを効率よく燃焼させるための微量栄養素も豊富なうえ、食物繊維まで含み、米を主食とする日本人にとって本当に理想的な食品だといえます。ところが、天然の栄養素の宝庫ともいえる胚芽や糊粉層を取り除いた白米は、糖質がほとんどで、ほかの微量栄養素はわずかに残るだけ。玄米と白米を食べているのでは、微量栄養素の摂取量にずいぶん差が出てくるはずです。これは米に限らず砂糖や小麦粉、そばなど、「より白く」するために、精製されたすべての食品にあてはまることです。 白米を食べても、副菜で微量栄養素をとればいいと考える人もいます。ところが、副菜で不足した微量栄養素を補うのは、難しいのが現実。例えば一日3杯のご飯を食べた場合、ビタミンBlの摂取量は玄米で0.56mg、白米で0.12mg。この差を副食で埋めるには、生卵なら650g(約10個分)、牛乳なら1753g(1.8?)。キャベツで1040g、リンゴなら5200gも食べなければなりません。現実的に可能でしょうか。仮に実行できたとしても、その人は肥満で悩むことになるはずです。 しかも最近は加工食品がかなり氾濫しています。コンビニエンスストアは確かに便利ですが、そこで売られているさまざまな食品は、ほとんど加工されたもの。ポテトチップスはあってもじゃがいもはなく、にんじんジュースはあっても、生のにんじんはほとんどありません。これらの加工食品は長期保存し、長期流通させるため、製造過程でほとんどの微量栄養素や食物繊維を捨ててしまいます。人間に不可欠なこれらの栄養素は、虫やカビ、湿気や酸素にとっても不可欠で、取り除かないと腐敗やカビなどの原因になるからです。 今の家庭の食卓には、原材料の顔が見えるものではなく、顔の見えない加工食品がたくさん並んでいます。精製された白米や調味料を使い、加工食品を多用した食事では、微量栄養素が不足するのも当然といえます。 FOODは風土によって決まる 寒くて雨が少ない欧米は、乳製品中心の食生活になり、温暖で雨の多いアジアでは米が主食の食生活になった…ということは、前に述べた通り。食生活は気候風土によって、長い年月を経て自然に育まれてきたもので、誰かが勝手に、米を主食にするとか、乳製品を中心にするとか決めたものではありません。 日本人は動物性食品の少ない食生活をしてきましたが、だからといって、世界の民族のなかで特別に体が弱いとか、骨がもろいということはありませんでした。ところが最近は 「乳製品を食べなければ骨がもろくなるとか」、「好き嫌いをせず栄養のバランスよく食べなければいけない」といわれるため、健康的な食生活を送るためには、実に多種類の食品を食べる必要がでてきます。牛乳やチーズが嫌いな子どもは、偏食をしてはいけないと注意されます。欧米の人が、納豆や豆腐が嫌いだといっても誰も偏食とは言いません。逆にほめられるくらいなのに、なぜ日本の子どもたちは牛乳やチーズを食べないと、注意されるのでしょう。私たちが乳製品をはじめとして、なぜこれほど多国籍の食品を食べなければならないのかを考えると、とても不思議です。 世界のさまざまな民族の食生活を調べてみると、どの民族も「偏食」をしていることが分かります。例えばイヌイットたちはアザラシやシロクマ、魚介類が主食で、穀類やいも類はもちろん野菜や果物はほとんど食べていません。砂漠に生活する遊牧民たちはチーズなどの乳製品が主食で、野菜はほとんど食べていない。そして前にも述べたようにパプアニューギニアの高地に生活する人たちは、1日1kg以上のイモと、少しばかりの豆、野菜という食生活を送ってきました。どの民族も気候風土の条件のなかで食べられるものを食べてきた結果で、「バランスよく何でも食べる」という食生活ではなくても、そのために民族が絶えることはなかったのです。 「多品目の食品をバランスよく食べることが健康の秘訣」という考え方に惑わされないようにしましょう。 今の食生活のなかでは、季節も失われてしまいました。野菜を例にとると、春にはセリ、ウド、フキ、ワラビ、タケノコなど、アクの強いものを食べます。冬の間じっとしていた体に対して「春だぞ、目を覚ませ!」と言っているようです。夏にはトマト、キュウリ、スイカ、メロンなど水分の多いどちらかというと生で食べたほうがおいしい野菜や果物がとれます。夏には、汗をかけということでしょうか。秋には米、イモ、麦、乗など冬に備えてエネルギーを蓄えられるようなものが、そして冬には、根菜類。生より温めて食べるとおいしいものばかり。その季節にとれる野菜を素直に食べていれば体にいいはずなのに、実際に八百屋さんなどで売れているのは、四季を通してレタス、キュウリ、トマト、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、ナスが中心なのです。 ムダなく全体を食べる 野菜をほとんど食べないイヌイットたちは、動物を食べるときに、その肉だけでなく内臓まで食べることで、ビタミンCを補います。彼らがビタミンCを意識してそうしているのでなく、せっかく捕らえた動物の内臓を捨てるのはもったいないから食べたのだと思いますが、その結果バランスのとれた食生活になったのです。肉を大量に食べるドイツでは、たくさんの種類のソーセージがありますが、このソーセージも肉だけでなく、血や舌、肝臓、心臓といった内臓まで腸に詰めて食べています。お隣の韓国でも、内臓、耳や足、皮までしっかり食べるのが普通です。ところが私たち日本人はどうでしょう。肉を食べるといっても、ほとんどがロースかももなど枝肉の部分だけ。内臓はたまに食べるくらいで、苦手な人も多そうです。 日本人は欧米の肉食文化を取り入れるときに、全体ではなく一部だけを取り入れてしまいました。そのうえ身のまわりには、精製され過ぎたものや加工食品だらけ。こんな食品を何品目も食べても、健康的な生活とはいえません。多国籍化した食生活で何でもバランスよく食べていると考えるのは錯覚。どんな食品をどう食べるかを考え、動物なら動物、穀類なら穀類を丸ごと残さずに食べることが重要なのです。 事実日本でもかつてそばを主食にしていた地域には、そばの食べ方に共通点が見られます。そばの子実は外側が黒っぼく胚芽や糠をたくさん含んでおり、中心部ほど色が白く、でんぷんが多くて細かくなりやすい性質があります。製粉してふるいにかけると、最初に出てくるのは、白い粉(一番上粉)。この粉だけで作ったのが、更級ともいわれる賛沢なそば。しかしそばを主食にするためには、ぜいたくな食べ方はもったいなくてできないので、さらにふるった二番粉、三番粉まで使ってそばを打ったのです。 岩手のわんこそばや出雲そばには、現在でもその名残があり、黒っぼく、プツプツ切れやすいのが特徴です。こうして、そばの子実全体を食べることで、バランスのよい食生活になっていたのです。 沖縄の肉料理 長寿の県として知られる沖縄では、 @ソーキ(スペアリブ)の唐揚げ。豚足 同様、大根、昆布と煮込むことも多い。 韓国の肉料理 韓国ではスジ(アキレス腱)はちの巣(胃)まで D牛のスジ(アキレス腱)、はちの巣(胃)、ホルモンを妙めたもの。 私たちの体を石炭ストーブに例えるなら、今の食生活は不完全燃焼を起こしている状態と言えます。 主な原因は次の4つです。
不完全燃焼の1、2については前に述べましたし、4については読者のみなさんもかなり意識をしていると思います。そこでここでは、3番目の原因、″煙突が詰まった状態の体≠ノついてお話ししましょう。 便秘は万病のもと 慢性化している人は、あまり気にとめていないかもしれませんが、便秘が原因で引き起こされるさまざまな症状があります。例えば横隔膜の上に胃が飛び出す裂孔ヘルニア。便秘をしていると、腹筋に力を入れていきむことになりますが、強い腹圧を習慣的にかけていると、胃が上に押し上げられてしいます。このような症状は精製された食品が少なく、食事もさほど欧米化されていない第三世界ではほどんどみられません。 静脈が変形してふくらむ静脈瘤も、強い腹圧がかかるのが原因といわれているのです。たとえ便秘をしていなくても食物繊維が不足すると、糖尿病や胆石、大腸ガンなどのリスクも高くなると指摘されています。 やわらかすぎる食品 「堅く入りやわらかくでる――やわらかく入り堅くでる」(ブリストル医科大学 ケネス・ヒューストン教授)。やわらかい食品ばかりを食べていると、便が堅くなることを言った言葉で、言いえて妙だと思います。もちろんやわからい食品すべてが悪いわけではありません。ただ、「やわらかくて、豊富に食物繊維を含む食品は少ない」ということくらいは、覚えておきたいものです。代表的なやわらかい食品は、精製された穀類です。白米より玄米が歯ごたえがあり、真っ白いパンのほうが全粒粉のパンよりやわらかいということは、大抵の人が知っているでしょう。さらに10代、20代の若い世代が好む、スパゲッティ、ラーメン、カレーライスなどは、やわらかいものばかりです。食物繊維は便の硬さを決めるスポンジのようなものです。腸の中に食物繊維が散らばっていれば水分を含んで適度な硬さの便なりますが、食物繊維があまりないと水分がとられすぎて硬い便になり便秘になってしまいます。 食物繊維が捨てられているような精製食品、加工食品などはなるべく避けたいものです。
・最近、疲れやすくなってきました、骨粗鬆症も気になります 「なるべく多種類の材料を使って、バランスのよい食事をするように頑張っていますが、生協でまとめ買いをするので、気をつけているつもりでも、偏りがあるような気がしています」と言う山根さん。小さい子どもを抱えてあわただしい毎日を送っています。食生活では、 @野菜をたくさんとるようにする という3つを心がけています。 「野菜は好きなので結構食べています。春夏は生野菜を、秋冬は煮たりして火を通したものが中心ですね。牛乳は、そのまま飲むのはあまり好きではないんです。でも骨粗鬆症が気になるので、コーヒーに入れたり、牛乳の代わりに料理にチーズを使うようにしています」 学生時代バスケットボールをしていた頃から腰痛に悩まされ「これまで3度ぎっくり腰で寝込んだ」以外は、大きな病気の経験はナシ。 「年齢的なものかもしれませんが、最近前よりも疲れやすくなってきました」というほかは、いたって健康です。 そんな山根さんも、今のように規則正しい食生活をするようになったのは、子どもが生まれてから。 「以前はひとりのときは、適当に残り物などですませていましたが、子どもが生まれてからは、規則正しく食べるようになりました。外食もほとんどしません」 また洋食や中華などこってりしたものが大好きだったのに、産後に太ってしまったことから和食中心の食生活に切り替えました。 「和食にしたら、すぐに体重も落ちつきました。それに最近は私も夫もあっさりしたものが好きになってきたので、和食が多いですね」 ふだんは長男の慎太郎君と2人で昼食。夕食は家族4人そろってがほとんど。間食は食べはじめるとクセになるので、なるべく食べないようにしているのですが、 「食生活ノートをつけた日のように、子どもが家にいるときは、つられて食べてしまいます」 アドバイス ・主食 ご飯が少なすぎることが食生活全体をおかしくしています。ご飯があまりにも少なすぎるため、十分な熱量がとれていません。そのため無意識のうちに、その不足分を油脂類や砂糖などの精製食品で補うことになっています。料理のほとんどが油がらみになっています。朝のパン食も油だらけになる原因です。パンの常食はやめるべきです。 ★副食 無国籍、無地方、無季節、無?酵の食生活です。「バランス」のとれた食生活。の意味を誤解しているようです。その結果、どこの国か、どこの地方か、いつの季節かわからない悪いパターンの食生活になっています。とくに?酵食品がほとんどないのが特徴です。ご飯、みそ汁、漬物という当たり前の食生活パターンの確立を。 ★おやつ もっと素朴に、主食に近いものを選びましょう。安全性に注意をしながら買い物をしているということですが。添加物の少ない菓子類を買うことも大切ですが、おにぎりや餅、焼きいも、乾燥いも、干し柿、甘栗などなら最初から添加物の心配は少ないわけです。手をかけ、お金をかけることがよいとは限りません。
・長女がアトピー性皮膚炎になり食生活の大切さを実感 川北さんの長女真希ちゃんは、生後7カ月のときから、アトピー性皮膚炎に悩まされています。 「最初はおせんべいを食べて顔が真っ赤になり、アレルギーの血液検査をしてもらったら、卵と牛乳が少しという結果でした」その後2歳半くらいのときに、夏にスイカばかり食べて食事が偏ってしまい、背中やひざの裏がかゆくなるようになったのです。 「食品添加物の多いおやつをたくさん食べるとでてきます。母乳を飲んでいる間はきれいな皮膚だったので食事の大切さを思い知らされました」以来、食生活には、かなり気を使うようになったといいます。 主食のごはんは、「白米+麦」と「玄米+あずき+大豆(黒豆)+はと麦」の2種類を毎日炊いています。 「祖父、夫、子どもの弁当などは白米、祖母と私が玄米を食べ、子どもはその時々によっていろいろです」 偏った食事をするとひざの裏がかゆくなるので、ごはんを必ず一杯は食べ、少しずつでも野菜、魚、肉、豆を食べさせるように心がけています。 「アレルギーの原因といわれた卵や牛乳も除去せず、多すぎないように注意しながら食べているのですよ」 市販のおやつを食べたときも、ひざの裏がかゆくなるので、おやつはなるべくさつまいもや手作りの蒸しパンやあんパンにしたり、市販のものでも昔ながらのおせんべいなどにして、ポテトチップスやチョコレートなどは、極力避けるようにしています。「インスタントラーメンなども主人が食べるときに、少しおすそ分けをしている程度」 紀久子さんの、努力のおかげで、莫希ちゃんのアトピー性皮膚炎は、ずいぶん落ちついている様子です。 「保育園でおやつを食べて帰ってきても、家で欲しがるので、少し食べさせます。それで家族と食事の時間帯がずれてしまうのが気になります」 アドバイス ・主食 家族みんなで納得できるご飯をみつけることが大切。ご飯は、胚芽米、分搗米などがよいでしょう。家族がゆるせば、少量の雑穀や麦類を入れます。昼などは、おにぎりやうどん、そば、もちなどがよいでしょう。しかも、しっかり主食が食べられるように、シンプルな食べ方をおすすめします。パン食は極力やめるべきです。 ・副食 副食は季節の野菜を中心に、肉類が多すぎます。副食の中心は野菜類、動物性食品よりも多くなるように意識しましょう。涼しくなってきたら、野菜は根菜を中心にします。全体的に肉類が多すぎます。動物性食品は肉類よりも魚介類を中心にしましょう。保育園の食事のことも考えると、自宅では肉類は極力減らすべきです。 ・おやつ 牛乳、乳製品はきちんとやめることが不可欠。アレルゲン(原因物質)の問題ではなく、牛乳や乳製品はきっぱりとやめるべきです。保育園の食事はとても健康を考えた献立とはいえません。しかし、全部やめさせることがよいか難しい問題です。せめて、保育園の先生と相談して、牛乳だけでもやめさせるべきです。 食生活を改善する 一番簡単な方法 今の食生活を改善するためには、実際にどんな方法があるのでしょう。てっとり早く、簡単に…という人にぜひ、お勧めしたいのが、献立を考えるときに、「カタカナ食品」を 「ひらがな食品」 に変えるということです。なーんだ、そんなこと? と言われそうですが、実行してみると、いかに私たちの食生活にカタカナ食品があふれているか、無意識のうちにたくさんのカタカナ食品を食べているかが分かると思います。 もちろんこれはかなり、大まかな目安です。すべてのカタカナ食品が悪いわけではないし、なかにはひらがな食品をカタカナ食品に変えたほうがいい…といった例外もあります。でも食事改善のために難しいことを考えたり、めんどうな手間をかけたくないという人は、カタカナ食品を極力減らすだけでも、何もしないよりは、食生活の改善ができるはずです。 カタカナ食品をひらがな食品に変えるのは食生活改善の第一歩。特に8ページの食生活診断で70点未満だった場合は、しばらく実行してみることをお勧めします。 これだけは守りたい10箇条 多少手間はかかっても、もう少し真剣に食生活改善に取り組みたいという人は、次の10箇条を実行してみてください。
A 穀類は未精製のものに
B 副食は野菜中心にする
C 醗酵食品を食べる
D 肉類を減らす
E 揚げ物は控えめに
F 白砂糖の入った食品は避ける
G 砂糖や塩は未精製の物を使う
H できる限り安全な食品を選ぶ
I 食事はゆっくりよく噛んで
子どものおやつにも気をつけて 小さな子どもがいる場合は、おやつでも気をつけたいことがあります。特に手間ひまをかける必要はありません。焼くだけ(もち、焼きいも、甘栗、とうもろこしなど)、むくだけ(くだもの類)、干しただけ(乾燥いも、干し柿、干しぶどう)のシンプルなもので十分。 ただしジュースや清涼飲料水などの甘い飲み物、牛乳、乳製品など、噛む必要のない飲み物で満腹にするのは、やめたほうがいいのです。飲み物は水や麦茶、番茶、ほうじ茶、薬草茶など、食事に影響のないものにするのがポイントです。 最後に、食生活は気候風土によって決まるということを忘れてはいけません。日本国内でも北海道と沖縄では当然違ってきます。まずは自分の育った地域の食生活になるべく近づくように、できるだけ努力してみましょう。 欧米色の強い色メガネをはずそう 小学校のとき健康優良児に選ばれたのは、欧米人並の体格を持った子どもでした。また「頭がいい」とほめられるのも、欧米の文化を取り入れるために必要な英語と、科学技術文明の基礎ともいえる数学や化学ができる子どもで、決して国語や社会ができる子ではなかったことを記憶している人は多いと思います。また趣味の分野でも、欧米のクラシックは高尚というイメージがあるのに、日本の民謡に高尚というイメージを持つ人はあまりいないはずです。 こうしてみると、私たちは無意識のうちに「欧米的なものに価値があり、日本的なものには価値がない」という色メガネをかけて、物事を見てきたような気がします。現在の食生活も例外ではなく、「欧米の食生活は豊かで、日本的な食生活は貧しい」という戦後の栄養指導によって作られたものです。 23ページの年表を見ると、戦後官民学が一体となって、パン(小麦粉)を食生活に定着させるため、さまざまな栄養改善運動をしていたことが分かります。さらに昭和33年に発行された『頭脳』という本は、米を食べる民族はパンを食べる民族より劣るという″米食低能論≠展開して、発売後3年で50版も出るほどのブームを巻き起こしました。 この本は米食を否定し、子どもたちの脳をよくするためにはパン食が良いと説いています。今、このような説を聞いても信じる人はほどんどいないでしょうが、当時はこの説に追随する学者もいて、マスコミも盛んに取り上げたため、戦後の痛手から立ち直りかけていた米農家に、大きな打撃を与えました。 また昭和39年の東京オリンピックは「日本人は小さい」ことを、実感させる役割も果たしました。そして「牛乳を飲まなければ大きくなれない」「肉を食べればスタミナがつく」と、多くの人が信じるようになったのです。 また、もう一つ知っておきたいのは、第2次世界大戦後は世界的な大豊作で、小麦、綿花、乳製品などの莫大なストックをアメリカ政府は抱えていたということです。倉庫代だけでも大変な出費だったわけですから、日本という新たな市場を喉から手が出るほど欲しい時期だったのです。そして、キッチンカーで小麦食を中心とした料理講習会を開いたり、学校給食の拡充、パン産業の育成といった戦略によって、パン食が日本人の食生活に深く根づくことになりました。 当時の米叩きの影響があまりにも大きかったため、「米を食べると背が伸びない」「米を食べると太る」といった、全く根拠のない俗説も生まれました。 しかし肥満と心臓病に悩む米国は1982年、農務省と厚生省が次のような指針を出しました。
肉類や砂糖類を減らし、でんぷん質をもつと食べようと言っているわけで、日本食―― 米が見直されるようになったのです。 昭和30年以降の食生活を見つめ直す時期 「55年体制の崩壊」という言葉は、おもに政治や経済の世界で使われていますが、実は食生活の世界にもあてはまる言葉です。1955年――昭和30年を境に、日本人の食生活は大きく変わりました。 わずか40年の間に肉や食肉加工品、牛乳、乳製品など欧米の食べ物などを口にするようになり、食べ物の種類も格段に増えて、ある意味では豊かな食生活を送れるようになりました。しかし、それで健康になったかというと、これまで述べてきたように、ノーと言わざるを得ないのが現実です。 今回の特集の内容については、かなりの違和感を持つ人がいると思われます。それも当然かも知れません。戦後40年以上にもわたって植えつけられてきた常識(迷信)。それを短期間に見直し、考えなおすことは簡単ではありません。 そして、今のままの常識を変えたくない、栄養学者の権威や大手食品産業の経済力によって常識は維持され続けています。「戦後の栄養改善によって子どもたちの体格は立派になった」「日本は世界一の長寿国」など‥・。 魅惑的な数字が次から次へと登場します。しかし、子どもたちの体位が向上したことにどれほどのメリットがあるのでしょうか。「体格」よりも「体質」でこそ健康問題は語られるべきだと思うのです。また、80、90歳になっても元気な人たちは明治に生まれた人たちです。現在の食生活で生まれ育った人たちではありません。 どちらが正しいのか…。今、子どもたちの体を通して私たちに警告を発しているように思います。 今や歯並びのまともな子どもを探すことは難しくなっています。アトピー性皮膚炎の子どもは30パーセントをこえています。まさに黄色信号の時代です。おそらく、このままでいけば…50パーセント、70パーセントの時代がやってきます。まさに赤信号になる日は遠くありません。そのとき初めて、55年体制(戦後)の常識が問われることになります。あなたは…何もしないで、その日をじっと待つのでしょうか?
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