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  なぜ病院の薬は
  こんなに多いの?

   ・たとえばこんなとき
    病院ではこれだけの
    クスリをもらいます
    [→読む]

    ⇒ 高血圧
    ⇒ 風邪
    ⇒ 糖尿病

   ・クスリが増える理由1
    クスリは対症療法
    [→読む]

   ・クスリが増える理由2
    クスリには副作用がある
    [→読む]

   ・クスリが増える理由3
    病気の真因が特定できない
    [→読む]

    クスリを飲むと病気が
    治るの?健康になるの?
    [→読む]

   ・クスリが増える理由4
    保険医療の点数制度が
    クスリ以外の治療の幅を
    狭める
    [→読む]

   ・クスリが増える理由5
    患者自身もクスリに
    依存する日本の医療の
    体質の問題
    [→読む]

   ・クスリの起源、
    「自然薬」と医薬品は
    どう違うの?
    [→読む]

   ・クスリと賢くつきあうには
    医師との上手なコミュニ
    ケーションが不可欠
    [→読む]

   ・こんなときどうしたらいい?
    [→読む]


なぜ病院の薬はこんなに多いの?

取材・文/岸原千雅子

日本は、世界一クスリ好きな国といわれます。
その医薬品総額は、年間6兆円にも上っています。
健康保険医療費は年間23兆円ですから、いかに医療が薬に頼っているか、
数字が示しているといえるでしょう。
ちょっとした風邪でも、薬袋いっぱいに出されるクスリ。
病院で出されるクスリがなぜこれほど増えるのか、
その謎を追ってみました。

★たとえばこんなとき病院ではこれだけのクスリをもらいます

監修・中井敬子
(中井ファーマコンサルタンツ代表)
岐阜薬科大学卒後、製薬会社勤務を経て、薬剤師として薬の副作用相談のほか、自然治癒力を高める「食効青汁総合療法」を指導、重症のアトピー、ぜんそくや成人病、ガンなどに効果を上げる。また医師とのつき合い方のアドバイスなど、薬全般に対するコンサルタントを行う。(07437-5-5532)

 私ちがふだん病院でもらう薬には、どんなものがあるのでしょう。
たとえば風邪薬。病院でもらう薬として、最も身近なものですか、
一回分で5、6種類の薬が出されるのは普通です。

高血圧

  高血圧や糖尿病などの成人病、慢性病の場合では、
種類の多さに加え、長期間もらい続けるため、莫大な量になります。

 蛇口から流れる水に手をかざすと、水の圧力を感じます。これと同様に、全身の血管を血液が流れるためには、圧力が必要です。高血圧とはこの圧力、つまり血圧が高い状態のこと。

 高血圧そのものに、特に症状はないのですが、そのままにしておくと心筋梗塞や脳卒中、脳梗塞、につながる危険が高いので治療がなされます。

 とはいえ、高血圧の原因についてわかっているのは、全体の1割弱で、ほかの疾患が原因となって起こるもの(二次性高血圧)。多くの場合(本態性高血圧といいます)は、遺伝やストレス、肥満や運動不足、食塩のとり過ぎなど、さまざまな要因が合併して起こると考えられ、治療の根本は運動・食事・生活指導。薬は根本治療にはならず、いつまでも飲み続けなければなりません。

@ .降圧剤(利尿剤) 

尿の排泄を促して体内の水分量を減らし、血液量を少なくして、圧力を低下させます。まず最初に使われる薬です。

A アンジオテンシン変換酵素阻害薬 

腎臓の機能を助け、1と同様水分を体外に排出させる降圧剤の一種。

B カルシウム拮抗薬 

心臓や血管は、細胞内にカルシウムが増えると収縮して血圧が上がるため、カルシウムの増加を抑えて血圧上昇を抑制。 交感神経抑制剤 心臓のポンプ作用を高め、抹消血管を収縮させる交感神経の働きを抑えて血庄を下げる。

C 精神安定剤 

そのように体の適応によって高くなっている血圧を、薬で下げると、脳や手足の末端に血液が行きにくくなります。そのため夜寝つかれないということが起こり、精神安定剤や睡眠薬が出されます。

D、E 胃薬(散剤、錠剤)

薬は胃を荒らしやすいので、たいてい併用されます。

F ビタミン剤 

栄養補給のため。

G 肝臓薬 

薬で血圧を低下させると、腸の働きも弱まり、老廃物が排出されにくくなって、解毒の役割をする肝臓の機能が低下します。また薬の解毒でも負担がかかります。

H 心臓薬 

強い圧力で血液を送り出す心臓にも負担がかかります。

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風邪

 現在、日本で薬価基準に登録されている薬は1万5千種。流通している薬は、2万種といわれます。それほど多くの薬があるにもかかわらず、風邪の特効薬というのは、いまだ存在していません。

 風邪の原因のほぼ90パーセントは、ウィルスによるものだということはわかっています。ウィルスに対抗する薬として、インターフェロンがありますが、大変高価なので、ふつう風邪薬には使われません。

@ 抗生物質 

風邪で病院に行くと多くの場合、細菌に効果のある抗生物質が出されます。風邪が細菌によって起こることはごくまれですし、抗生物質ではウィルスを撃退することはできません。にもかかわらず授与されるのは、二次感染防止のため。風邪をひくと抵抗力が落ち、ほかの細菌に感染しやすくなるので、その予防のために使われます。しかし、そのために免疫機能に関与する、体に必要な腸内善玉菌までがダメージを受け、より抵抗力を低下させることにもなりかねません。また、抗生物質を多用すると、耐性菌が生じやすくなり、院内感染などの問題につながります。このことは後に述べます。

A 胃薬(散剤) 

風邪では胃の働きが弱くなり、またほかの薬が胃を荒らすので、胃薬が出されます。長引くと、錠剤が併用されることもあります。

B 鎮痛解熱剤 

風邪の症状はさまざまですが、最初は熱が出て、頭が痛み、全身がだるく関節の痛みを覚えたり、喉や鼻の炎症をおこしたりします。痛みや熱を緩和するためには鎮痛解熱剤、咳がひどい場合には鎮咳剤、鼻の症状には抗ヒスタミン剤、痰には痰をとかす酵素剤というように、症状によってさらに別の薬が加えられます。抗ヒスタミン剤は、眠気を起こさせるので、運転時などには注意が必要です。

C 総合ビタミン剤 

体調を整え、抵抗力を高める効果があるとして、多くの場合、併用して出されます。

D トローチ

E うがい薬 

症状を緩和したり、二次感染を防ぐために、これらの薬もしばしば併用されます。

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糖尿病

 私たちが食事をすると、血液中のブドウ糖量、すなわち血糖値が上がります。健康な体では、しばらくするとすい臓から出されるインシュリンという物質の働きで、値がもとに戻っていきます。こうして私たちの体は、血糖値を常に一定に保っていますが、この働きがうまくいかなくなった代謝障害が、糖尿病です。

 なかにはインシュリン依存性糖尿病といって、原因が先天的な場合もありますが、多くは非インシュリン依存性糖尿病といわれる、後天的な原因によるもの。インシュリンが血糖値を下げるそばから、甘いものをとり過食をして、さらに血糖値を上げる。やがて、インシュリンを出すすい腋がくたびれて働かなくってしまいます。それで高血糖になるのです。いわば体のストライキのようなものです。

@ 血糖降下剤 

調節のできなくなった体に代わり、血糖値を下げる薬。

A 抗高脂血剤 

糖尿病の人では、グルメで肉食に偏ったりする場合が多いもの。このように高脂肪食をとっていると、血液中の中性脂肪やコレステロールが高くなります。それを下げるために出される薬。

B 胃薬(散剤) 

高血圧の場合と同様、薬によって荒れる胃を守るために出されます。

C ビタミン剤 

栄養補給として、総合ビタミン剤が出されます。

D 消化酵素剤 

すい臓がくたびれてくると消化酵素の働きも低下します。そのためにと出される薬。欧米では出されない日本独特の薬です。

E 肝臓薬 

分解、代謝、解毒などに関与する肝臓は、すい臓の親工場でもあります。すい臓が弱っているということは、当然肝臓にも負担がかかって、悪くなっている場合が多いので、肝臓の薬も出されます

F 通風の薬 

糖尿病や高血圧は、合併症を併発することが多いのですが、糖尿病では、特に肥満した人に多い通風を併発しやすいのです。診断されるほどでなくても、兆候が見られると投薬されたりします。

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★クスリが増える理由1
 
クスリは対症療法 症状の数だけクスリは増える

河野友信 (聖路加国際病院・心療内科医)

PHR財団ストレス科学研究所副所長、聖路加国際病院心療内科、産業ストレス健康管理センター所長。心身医学、臨床ストレス学など広く関心を持ち、全人的医療・ホリスティック医療に長年従事。著・編者に『がんと闘う家族の本』『医療学』など。

ひとつの症状にひとつのクスリ

 血圧が高ければ降圧剤。熱が出たら解熱剤。咳がひどい場合には鎮咳剤というように、多くの薬は、それぞれの症状に対して、それを緩和するために出されています。

 風邪薬はその典型的なもの。ほとんどの風邪はウイルスを原因として起こりますが、前述したように、適切な薬がありません。風邪によって起こる症状を、緩和するものでしかないのです。

 ひとことで「風邪をひく」といいますが、その症状は本当にさまざま。熱が出る。全身がだるく、関節の痛みがある。喉が痛み、咳が出る。ぐすぐすと鼻水が止まらず、くしゃみが出る。薬はそのひとつひとつに対してして、効くという名目でできています。ひとつの薬が、ひとつの症状に効くのです。そのため薬は、症状の数だけ増えることになります。

 症状というのは、なぜ生じるのでしょうか。たとえば風邪で熱が出るというのは、熱に弱い細菌の感染から、体を守るための防御策でもあります。また喉や鼻などの粘膜は、感染しやすい場所ですが、咳や痰、鼻水によって、体はそこから細菌を外に押し出そうとしているのです。

 もちろん高熱が続くと体力が消耗したり、体にダメージを与えることもあり、薬は有用です。しかし、こうした生体防御反応である症状のみを消してしまっても、根本の解決に
ならないどころか、体が本来持つ自然治癒力を妨げることになります。

そもそも薬ってなに?

  薬は、紀元前2000年〜1500年のメソポタミアやエジプト文明に、すでに存在していた記録が残っているといわれます。当時は当然、現在のような化学薬品ではなく、薬効を持つ動植物から作られていました。

 その後長い間にわたって、人類は、自然の植物や動物、鉱物に、乾燥させたり粉末にしたりという加工を加えた「薬」を使っていたのです。

 今ある化学薬品は、基本的にそれら自然の中にある薬効成分を、科学的に抽出・精製し、作られたものです。あるいは抗生物質のように、顕微鏡の発達によって伝染病や感染の原因が明らかにされ、それに対抗する微生物が発見されて発達してきたものもあります。

日本では明治7年、1874年に明治政府によって医療制度が定められ、西洋医学が全面的に採用されました。この時を境に、薬はそれまでの主に植物を原料とする生薬から、化学薬品へと変わったのです。

 その後、1928年にフレミングがカビからペニシリンを発見して以来、抗生物質の歴史は急速に発展しました。このように、私たちが病院でもらう薬の歴史は、さかのぼること1〜200年という浅いものです。

化学薬品は、自然物の中からある成分を抽出・精製したものだけに、ねらい撃ちのような効力を発揮します。つまり標的の数だけ薬が必要になるのです。そして標的とは別の部分で作用して、副作用を起こします。

病気が長びくとクスリはどんどん増える

高血圧や糖尿病には食事や運動療法、生活習慣の改善がまず必要。薬は二義的なものです。また薬を長く飲み続けると、それがさらに薬を増やすという悪循環が起きます。再び、高血圧について考えてみましょう。

 高血圧には、さまざまな原因があります。腎臓の働きが低下して、水分代謝が悪くなり、血液量が増えて高血圧になることもあります。また動脈硬化で血管の中を血液が通りにくくなっている場合は、手足や脳の末端まで血液を送るために、心臓でポンプ圧力を高くする必要があります。

「この場合血圧の上昇は、生命を少しでも健全に維持しようとする、いわば体の適応反応です。それを薬で下げてしまうと、脳の末梢に血液が行きにくくなり、長く飲み続けると、脳細胞がダメージを受けて、脳の機能が低下してきます。しばしばこれが痴呆の原因になっています」

 中井ファーマコンサルタンツの薬剤師、中井敬子さんはそう指摘します。そのために精神安定剤や睡眠薬など、別の薬が必要になってくることは、前ページでも述べました。

「年配の方の場合、腸の周囲の血液循環も悪くなって、腸のぜん動運動がうまく働かなくなり、便秘になりやすくなります。そうすると老廃物が長く腸内にとどまって再吸収されることになり、それを解毒する肝臓に負担がかか量てしまうのです」

 このようにして便秘薬や肝臓薬が、さらに出されることになります。

その場を戦うための「戦争の医学」

 糖尿病の血糖降下剤も、対症療法のひとつ。原因を取り除くのではなく、下がらなくなった血糖値を、薬で下げようというものだからです。

 体がうまく働いていれば、すい臓からインシュリンが出され、血糖値は保たれます。その機能が低下したので、値を下げるために、薬を飲み続ける。これはちょうどおこづかいと同じだと、中井先生は言います。

「働けなくなれば、おこづかいをあげたらいい、という発想です。毎日十分におこづかいをもらっていると、体は自分で作ることをサボるようになります。働く意欲もなくなり、自活できなくなるのです」

 血糖降下剤だけでなく、アレルギーその他に効果のあるステロイド剤など、体が本来持つ機能を肩代わりする薬は、ほかにも多くあります。

 それではなぜ根本治療でなく、対症療法が主流になったのでしょうか。

 それは、西洋近代医学のあり方そのものにかかわります。病気を部分でとらえ、特定の臓器や病巣をターゲットに、治療を施したり、場合によっては取り除く。その結果、病気の根本原因よりも、現れた症状や検査数値をもとに、治療が行われることになります。

「『西洋医学は、戦場の医学』といわれますが、実際戦争中、すぐ戦えるよう当座の症状を抑えるために発達した経緯があります。平和になっても、それが便利だとして重宝されたのですね」(中井先生)

クスリはどんな人にも同じように効くわけではない!

 特に気をつけない限り、私たちはふだんの食事で、1日に約11グラム、年間4キロの添加物をとっている計算になります。それにさらに農薬も加わります。こうした化学物質が、体の中で飲んだ薬と反応し、その影響で薬に対する感受性が変わってしまうのです。

 新薬の開発には、10年100億円とも、150億円とも言われる時間と費用がかかり、その間に動物実験や被験者へのテストを通して、安全性と有効性が確認されます。

 しかし実際には、何種類もの薬を長期間にわたって使っている患者が多く、一定期間、単一の薬を使って行った実験とは条件がずいぶん違います。

 こうした理由から、実際には効果がないということが起こります。

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★クスリが増える理由2

クスリには副作用がある、それに対してまたクスリが必要に

昨年発覚して大きな問題となり、新聞紙上をにぎわせた薬のスキャンダルに「ソリブジン事件」があります。

「ソリブジン」は、帯状痛疹というウィルス性のやっかいな疾患に対し、画期的な効果をもたらすとして、平成5年に発売されました。ところが発売後わずか1カ月の間に、薬を投与した患者の中から15人もの死者を出し、これまでにない大事件に発展したのです。

 亡くなった患者は、みな特定の抗ガン剤を併用していました。実は発売前の実験段階にも、二つの薬を併用して、死者が出ていたのですが、説明書に記載されていたのに医師が読まず、また薬品会社のMR(医薬情報担当者)から、医師に十分な説明がなされていなかったために、多数の被害者が出てしまいました。

 どんな薬にも、効きめをもたらす「主作用」のほかに「副作用」があります。「ソリブジン事件」もこの副作用が原因で起こった事件です。

薬は両刃の剣 効きめりある薬ほど副作用も強い

 高血圧、風邪、糖尿病、いずれの場合にも、胃薬が出されていましたが、これは薬の副作用によってさらに薬が多くなる、典型的な例です。薬が胃を荒らすので、それに対しで別の薬が出されるのです。

 また薬は、肝臓に負担をかけます。肝臓は、解毒という働きをする臓器ですが、効きめの裏側にある副作、つまり毒性の部分を消す役割を、この臓器が果たしています。薬を飲み続けると、この肝臓への負担が大きくなるので、肝機能検査の値が芳しくなかったりすると、加えて肝臓の薬が出されることになります。

 また肝臓で解毒し切れなかった薬は、排泄の際、ろ過の働きをする腎臓にも負担をかけます。そのため、腎臓薬が追加されることもあります。

 薬は「両刃の剣」といわれますが、効きめが鋭ければ鋭いほど、副作用も強い、という性質があります。これが薬を増やす原因になるのです。

副作用はすべての薬に恐ろしい薬害事件を引き起こす原因にも

 なぜ薬には副作用があるのでしょうか。中井先生は言います。
「頭が痛い時に鎮痛剤を飲んでも、薬は決して頭だけに行くわけではありません。吸収されると全身を回り、その間に頭の痛みに作用してブロックします。当然ほかの神経もブロックするので、眠気を起こします。これが副作用のしくみです。飲み薬だけでなく、塗り薬も、また坐薬や注射薬も、体内に入った薬はすべて血管に乗って全身をくまなくめぐるので、副作用を起こします」

「ソリブジン事件」は、日本の医薬品業界の問題を浮き彫りにしています。なぜ実験で死者を出しながらも発売され、また正しく理解説明されないまま使用されたのでしょうか。

 そもそも薬には、いくつかの構造的な矛盾が存在します。ひとつは、薬価基準制度の矛盾。薬の価格は、新薬が承認された時点で、国の薬価基準に掲載されます。これは、医師が診療報酬を請求する際の金額です。ところが医師側にとつては、薬価基準通りに購入していたのでは、差益は得られません。そのため薬価基準の下に、購入価格が存在するのです。

 この価格は一定ではなく、大量に購入する大病院ほど安く、少量の病院ほど高いというような、薬品会社の戦略が出てきます。すると、そのばらつきや正式な薬価との差を是正するために、厚生省は薬価の引き下げを行うのです。医療費の見直しによってこの引き下げは年々厳しくなっており、いきおい薬品会社は儲けの大きい新薬に頼らざるを得ません。

 薬は生命にかかわるもので、そこには倫理観が求められます。にもかかわらず、市場経済の中で、利潤を生む商品として流通していることに、もう一つの矛盾があります。たとえ15年150億円ともいわれる開発費を投じ、効果が期待されるものであっても、申請を通すために実験データを操作するなど、許されないこと。「両刃の剣」であるからこそ、安全性を厳しく求めていかなければなりません。

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★クスリが増える理由3

病気の真因が特定できず、クスリ治療に頼らざるを得ない

日本の医薬品生産額は、今や年間6兆円となりました。これはアメリカに次いで第2位の金額ですが、国民1人あたりにすると、圧倒的に第1位となります。世界一薬好きの国民だといわれる、ゆえんです。また、年間の国民総医療費が23兆円という金額から見ても、治療に占める薬の割合がいかに多いかわかります。

 なぜこれほどまで、医薬品が増えるのか。これにはあとに述べる国民性の問題がありますが、それ以外にもさまざまに絡み合う制度的、教育的な背景があります。それらを整理
していくことにしましょう。

心因性の疾患など原因が不明の場合治療は薬が頼りに

 高血圧の場合、多くは本態性高血圧といって、原因がきちんと特定できるものではありません。肥満やストレス、塩のとり過ぎといった要因に加え、遺伝も関与していて、それらの因子が組み合わさって発病すると考えられています。

 体の異常には、このように真の原因を特定できないものが、意外に多いのです。

「赤痢菌に感染して、下痢をしている場合には、抗生物質で原因となる赤痢菌をシャットアウトすれば、やがて治ります。しかし同じ下痢でも、心因性の下痢の場合、薬でおなかの痛みや下痢は抑えられても、原因を見つけ出して、それをシャットアウトすることはできません。このような場合には、医師は薬を出す以外に治療の方法を持たないのです。真の原因は職場の上司なのに、それは機械では検出されないからです」

 聖路加国際病院・心療内科医の河野友信先生はこう言います。

「やがて目の奥が痛いので眼科に行く。頭痛や胃痛に悩まされて内科に行く。受診した科の分だけ診断名がつき、その分だけ薬が出されることになります」

実際に使う薬の知識を医師は臨床の現場で学ばなければならない

 河野先生はもうひとつ、医師の教育制度の問題を指摘します。

「医学部では、薬の構造や作用・副作用など、薬理学については学びます。しかし、その薬を臨床で患者に使う場合に、どのようにしたらいいかについては『臨床薬理学』を学ばなければなりません。これを現在設置しているのは、全国でも大分医科大学しかないのです。

 生体にはリズムがあり、薬の吸収・分布・代謝・排泄の状態はそのリズムによって変わりますし、性格やストレスによって薬効が変わることもあります。そうした知識や、薬の実際的な使い方について、医師は実地で学ぶしかありません」

 とはいっても臨床の現場では、医師には次々に出される医薬品について、学ぶ余裕はなかなかありません。そこで実際の薬の知識は、先に述べた薬品会社のMRに頼ることになります。MRは薬品の情報提供者ですが、といっても自社の製品を売り込もうとする立場なため、副作用を含めた公正な知識が伝わるかどうか、疑問が残ります。

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★クスリを飲むと病気が治るの? クスリを飲むと健康になるの?

 病気を治すために薬を飲む。では薬は「体にいい」のでしょうか。薬を飲むと、健康になるのでしょうか。

 薬は体の中に入ると全身をめぐり、その間に効きめを発揮します。しかし必要な場所にだけ選択的に働くわけではないので、それ以外の場所にも副作用を及ぼします。

 その後薬は肝臓で代謝・解毒され、汗や尿、便、呼気などから排泄されます。このプロセスの間中、薬は体に負担をかけます。薬を使うことはそれだけで、体にとっては重荷なのです。

 それでも薬を使うのは、ひとつは抗生物質のように病原菌を退治するため。それ以外は薬の力で一時的に苦痛を抑え、治癒を助けるためです。

 つまり、薬はあくまでサポート役。健康は、薬が作り出すものでは決してありません。

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★クスリが増える理由4

保険医療の点数制度がクスリ以外の治療の幅を狭める

日本の健康保険は、点数制度により成り立っています。医師は診療報酬点数表に基づいて診療費を計算し、請求します。これは出来高払い制度といわれるもので、注射をしていくら、検査をしていくら、というように、医療行為一つ一つに対して細かく点数が定められ、それを加算していくしくみです。投与した薬も、薬価基準で計算されます。

医師の技術が極端に低く評価されている診療報酬点数制度

ところがこの制度では、医師の技術料が他国に比べ、極端に少ないのです。そのため医師は、投薬や検査によって収入を上げる以外に、方法がなかったのが実情です。

 近年は薬価引き下げ措置などによって、薬を出せば出すほど収入に結びつく、ということは緩和されました。しかし技術料の低さは改善されず、また治療を薬に頼る体質もいまだに残ります。

 たとえば体の異常を訴えて病院に行っても、それがストレスによる心身症とわかるためには、原因を探るためのカウンセリングが必要です。ところが、心身医学療法と呼ばれるこの相談技術料は、30分以上時間をかけて、わずか700円。それ以上いくら時間をかけても、金額は変わりません。これはいかに医師の技量が低く扱われているかを示す、典型的な例です。

 河野先生は言います。
「現代の日本の西洋医学には、こうした大きなアンバランスがあります。もちろんシステムだけの問題ではありませんが、治療は薬や機械まかせという傾向を、この保険点数制度の矛盾が助長してきたことは確かです」

 保険点数制度では、薬を出せば出すほど儲かるため、医師は患者に必要以上に投薬しているのではないか。こうした懸念に対処するため、厚生省では老人病院に限って、i990年から「定額払い方式」を導入しました。これは薬や注射、検査の量に関係なく、患者一人当たりに一定の料金が支払われるとしたものです。

抗生物質の乱用 院内感染まで生み出す薬価基準のあり方

 薬を出しても出さなくても、決まった額の医療費が支払われる。この方式を導入した病院では、平均3割も薬や注射の量が減ったといいます。 このことは、出来高払い制度のもとではいかに不必要な薬が投与されていたかを、如実に物語っています。

 「今は薬価基準のあり方そのものを、見直す時期にきています。医療者側は、薬を哉数仕入れたほうがいいのですから、売る側はそのニーズに応えて安く売ろうとする。それを追って国が薬価を下げる。そうなると製薬会社 は当然、薬価の下がった古い薬より、高い新薬をメインに売り込みます。それで古くても必要な薬が使われなくなっていくというおかしなことが、日本の医薬品の世界では起きているんですね」

 河野先生が指摘するこのことこそ、実は日本でMRSAによる院内感染が驚異的に発生している理由です。

 MRSA、すなわちメチシリン耐性黄色ブドウ球菌とは、メチシリンという抗生物質に耐性を持つ感染菌のこと。菌自体の威力は、さほど強くはないのですが、抗生物質の乱用によって、次々に新しい抗生物質に耐性を持ち続けてきたため、感染すると手のほどこしようがないというやっかいな存在です。

 日本の抗住物質の使用量は、世界第1位。2位アメリカの1.5倍もの量が年間に使用されています。

 抗隼物質は、医薬品の中でも薬価が高く、うま味が多いため、ちょっとした風邪にもすぐ使われてきました。そのため耐性を持つ菌が登場し、それに対して新しい抗生物質が開発される。すると菌はさらに耐性を獲得する。まさにイタチごっこです。

 また抗生物質が乱用されると、体内に住む善玉菌を含む腸内細菌までを殺してしまうので、逆に耐性を持った菌がはびこることになります。

 院内感染の対策には、抗生物質の乱用をやめ、適切な使用を心がけること、院内のこまめな消毒と清浄に十分配慮すること、といった地道な努力が効を奏することがわかっています。患者の治癒力を高めることが大切です。

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★クスリが増える理由5

患者自身もクスリに依存する日本の医療の体質の問題

「患者さんでも年配の方は特に、検査数値が良くなることを喜びます。薬が効いて値が下がることを期待なさる傾向があるんです。そういう方々には、薬の作用・副作用の事実だけをお伝えし、判断はご本人におまかせしています」

 と言う中井先生の言葉を借りるまでもなく、薬をもらうことイコール治療だととらえる傾向が、患者の側にも存在します。河野先生は、こうした患者、医療者双方の薬に依存する体質が、薬を増やす原因の一端になっていると指摘します。

「これには、日本人特有の体質が影響していると思います。『なにもわかりませんからおまかせします』という人が多いんですね。病気になった原因を振り返って生活や行動を変えることもないまま、医者の出す薬に万能的な期待をするのです」

 もらった薬袋の中身が少ないと、十分な治療行為がなされていないのではと不安に思う。そういう患者にとって、薬は安心材料です。医師は薬を出さざるを得ません。医療体制を問いただす前に、まずこの患者側の薬依存体質をこそ、見直す必要があります。

医薬分業の実現にもこうした依存体質がネックになっている

また河野先生は、こうした体質が、医療の新しい試みが盛んに望まれながら、実際にはうまく浸透しない原因にもなっていると言います。そのひとつが、医療費削減のために厚生省が推進する、医薬分業システム。

「患者の薬歴を管理して、副作用や薬害のチェックができるという点から、医薬分業制度には期待が持たれていました。また医薬品費の節減が実現すれば、クスリ大国の汚名を返上することもできる。病院にとっても、薬価が下がって経営上のメリットがない医薬部門をむしろ切り離すことの方が、プラスになるというように、理論上は画期的なシステムのはずでした。ところが、あいかわらず医薬品費は増えているんです」

 多くの医者は、治療を薬と機械に頼り、ほかの治療法を知らない。患者は医者におまかせという状態。むしろわざわざ薬局に行くのは二度手間だとして敬遠される始末。医薬分業時代に向け、患者は薬局を選ぶ眼を持つ必要があるといわれて来ましたが、残念ながら、現状ではわが国の体質を計算外にした、机上の理論になってしまっているようです。

「同じことがインフォームド・コンセントにも言えます。医師が情報を公開して、患者が自己決定、自己選択をする権利を保障しようとする。これはとても大事なことです。しかし実際の現場では、薬も含めて提供された情報を、自分で評価、選択できる人は、多くはいません。そうした依存体質を見直すとともに、日本の風土や体質に合った方策を考えて
いく必要があります。

「おまかせ」ではなく積極的に医師に尋ね、セルフケアを目指す

 今は、医薬品一つ一つの種類や効用を克明に記した本が、多く出ています。自分が病院でもらった医薬品を照らし合わせれば、どんな薬かがわかるようになっています。

 「でもそれがわかったからといって、7、8種類もらっている薬をどうすればいいのか。それがわからないんだと思うんです。本で正確な知識を得ることはもちろん大切です。でもまず医師や薬剤師にきくことです。その場合に『この薬、副作用があるんじゃないですか』と言うきき方では、医師もむっとくるでしょう。『何の薬ですか』『調子が良くなってきましたが、薬は必要ですか』と患者の側からぜひ働きかけて下さい」(中井先生)

 セルフケア、セルフコントロール。アメリカでは健康に対するそうした考え方が、今根づいています。自分の健康の問題は、自分で判断し、責任を持つ。副作用で取り返しがつかなくなってからでは遅いのです。

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★クスリの起源、「自然薬」と医薬品はどう違うの?

林 真一郎(グリーンフラスコ代表)
ハーブショップ、グリーンフラスコを主宰する薬剤師、臨床検査技師。ハーブ、アロマテラピー、フラワーレメディーなど、さまざまな自然療法を扱う。(03-5729-4682)」

 薬効を持つ自然の植物、薬草は、今ある医薬品の起源といえます。私たちの身近なところでは、お茶や料理に使うハーブもその一種です。

 薬草には非常に多くの成分が含まれます。そのおかげで、薬効をもたらすだけでなく、全体の免疫力を高め、整えてくれる働きを持ちます。

 ところが医薬品など化学薬品の場合は、自然界から特定の薬効成分のみを抽出し、それを化学的に合成したものです。そのため、切れ味の鋭い薬効を持つ反面、安全性の点では注意を要するようになりました。開発に際しては実験を重ね、安全性を十分確認しなければなりません。

 自然薬が免疫を高めるのに対し、化学薬品は、逆に免疫を落として、薬の効果のみを際立たせる形で作用します。生体のさまざまな反応を一時的にシャットアウトして、薬の力を最大限に効かせるのです。

 つまり化学薬品は、ここ一番に威力を発揮するものです。極性が高く、反対の極性に偏った状態にある人を治すために使われるものであって、本来は長く使うべきではありません。

 高血圧や糖尿病といった成人病の場合は、生活習慣が原因で起こることがほとんどで、また治療も長くかかるので、極性の強い薬より、マイルドな自然薬の方が適しているといえます。アメリカをはじめ諸外国では、高血圧は運動や食事など生活習慣で治すというのが、今や常識。また日本の西洋医学界でも、ハーブなどの自然薬を扱い始める医師も登場しています。今後、自分にあった薬の使い方を選択していくためにも、正しい知識を持つことが大切です。

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★クスリと賢くつきあうには医師との上手なコミュニケーションが不可欠

降矢英成 (帯津三敬病院・内科医)
東京医科大学卒。内科、心身医学、東洋医学を研修後、現職でがん患者や心身症患者を診察。学生時代よりホリスティック医学に関心を持ち、日本ホリスティック医学協会の役員として発足に関わる。現在同会理事。共著『ホリスティック医学の治癒力』

薬をもらうまでの診察段階で、気持ちよくいい関係を作ることが大切

 医師は薬について、患者に説明する義務があり、患者は知る権利があります。そうはいっても人間どうし、気持ちよく関わりたいものです。

 薬について、医師にどう聞いたらいいかと思われることでしょう。薬の説明をするのは、診療も終わりに近づいた段階。問題は薬についてのやりとりだけでなく、それまでにいい関係性を持てるかどうかです。

 そのためには、症状などを説明する時はなるべく簡潔に。長くなるようなら、メモにして持っていくとずいぶん違います。予約診療の場合は、時間も限られているので、こうした配慮があると医師の気持ちも違います。医師と患者は上下関係ではありません。対等な関係だからこそ、エチケットを守った対応が必要です。

医薬分業が進む中、より詳しい知識は薬の専門家である薬剤師に聞くのが一番

 薬については、薬剤師という専門職のウエイトが、今、いい意味で見直されています。

 医師は、薬に関しては専門家ではありません。もちろん医師も、患者の希望に応え、説明はしますが、より突っ込んだ詳しい知識まで積極的に知りたい場合には、専門家である薬剤師に聞くのが一番です。

 医薬分業の方向性は、今後ますます進むと考えられます。その場合に医薬品の色や種類、使用上の注意や副作用などについて、処方箋を書く医師に説明を聞くよりも、薬を手渡してもらう薬剤師にきちんと聞いた方が、ずっと合理的です。またほかの病院の薬との相互作用などについて、相談できるのも嬉しいところ。薬剤師を上手に利用しましょう。

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★こんなときどうしたらいい? 医師に聞く上手なコミュニケーションのためのアドバイス

Q 予約制で、医師が忙しそう。薬について聞きたくでも気がねしちゃうのですが。

A たとえ忙しそうにしていても、聞かなければいけない時は聞くべきです。そういう時に気がねはやめた方がいい。必要ありません。
ただその時、時間を延長してでも聞いていいわけではありません。医師の事情をくんで、できれば「今日はこれを重点的に聞こう」というようにポイントを絞って聞きます。
そして聞いたことは、メモを取るようにするといいでしょう。時々「この薬は何ですか」と以前にも説明した薬について繰り返して聞く人がいますが、それでは医師も説明する気をなくします。もちろんいつでも同じように説明するべきですが、医師も人間。メモを取られていると、ちゃんと説明しようという気になるものです。

Q 「そんなにたくさん、薬を出さないでほしい」と言ってもいいの?

A 同じことを言うのでも、どんな言葉を選ぶかによって、伝わり方は違ってきます。
「そんなに出さないでほしい」とストレートな言い方で言うよりは、「できたら薬はあまりたくさん飲まないようにしたいから、何か減らせるものはないでしょうか」というように、自分の希望をごく普通に伝える形で、言うようにするといいでしょう。そうすれば医師は、なるべくその希望に添うようにと考えますし、またどうしても削れず、薬を何種類も使わざるを得ない場合には、その旨を説明してくれます。

Q ほかの病院でもらった薬を飲んでいるけれど、大丈夫?

A 薬には、それひとつだけ飲む分には問題がなくても、飲み合わせによって副作用が出る場合があります。そのため別の病院で出された薬を飲んでいる時は、それがどのような薬なのかを、医師に必ず知らせて下さい。
困るのは、「大丈夫でしょうか」と言われて、その薬を持ってこない人がいることです。「耳鼻科でもらった薬を飲んでいるから心配だ」と言われても、それがどんな薬かわからなければ、大丈夫かどうかはわかりません。
名前がわかればいいのですが、一番簡単なのはそのまま持って来ること。持ってきてくれさえすれば、病院側で調べ、併用して問題がないかチェックできます。 また、以前に飲んだ薬で、発疹が出たり気持ちが悪くなったものがあれば、その薬の名前を聞いておきます。そうした恐れのある薬を出す時、医師は必ず薬歴を聞きますが、患者の側からも申し出てくれると、医師は助かります。

Q 今かかっている先生ではなく、できれば同じ病院の他の先生に替わりたい。どうしたらいいでしょうか。

A 医師も患者も同じ人間ですから、相性のいい悪いはあります。単なるわがままでというのではなく、しかるべき理由があり、何人か医師を抱えている病院だった場合には、がまんして病気を悪化させるより、別の医師に替わることを考えてもいいでしょう。
ただその場合には、ひとつの言い方の知恵として、「仕事の都合でどうしてもこの曜日のこの時間しか来れなくなったので、お願いします」という形で、別の先生の担当日にチェンジすることです。
医師は、急に移ってきた患者に対しては、臨時と考え、当然ながら担当医に返そうとします。「どういうつもりですか」と尋ねたり、中には邪険に扱う医師もいるでしょう。しかし「この時間しか都合がつかなくなった」と言われれば、「わかりました」となるのです。
これはお互いのエチケット。医師だから、患者だからといって、基本的な関わりの作法は変わりません。

Q 病院で出された薬を飲んでいます。調子がよくなったので、もう薬をやめたいのですが。

A 薬のなかには、素人判断で中断すると危険な薬もあります。ひとつは抗生物質。良くなったからといっても、細菌がまだ残っている場合があり、その時急に薬をやめると細菌が一気に力を強め、危険なことがあるからです。
また高血圧や心臓病など、慢性の成人病の薬は、調子がよくなったからといって勝手に中断すると、急には体がついていかないため、生命の危機に瀕します。
「調子がいいので、薬を減らせませんか」「減らせる薬はないですか」というように、薬を減量できないかと思ったら、まずそれを医師に伝えて下さい。患者さんのなかには、薬が多いほど喜ぶ人もいるので、医師の側にも薬を減らせない事情があります。薬を減らしたいのだという意志を患者の側から表明して、減らす方向で考えてもらうことを求めていきましょう。

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薬の処方や説明も大事だが、医師にはもっと医術の部分により期待したい

 薬は、医師が行う治療手段のひとつに過ぎません。かつてはほかに手段がなかったため、薬が高いウエイトを占めていましたが、今は心理療法、東洋医学的なアプローチなど、選択肢はたくさんあります。

 むしろ薬については専門家である薬剤師にまかせ、それ以外の医術の部分で、医師にもつと期待してもいいのではないでしょうか。

 最近、病棟に薬剤師が配置され、入院患者が出される薬の説明を受けられる、「臨床薬剤師」の制度が始まりました。そのくらい、薬に関しては片手間ではできない業務になっています。医師が薬のすべてを説明・管理することには無理があるのです。

 医療には、患者が望むとおりに流れていくところがあります。医師は薬を減らしたいと思っていても、減らすと異議を唱える患者さんは、現実に多くいます。中には、薬が多い医師の方が腕がいいと思っている人もいます。そうなると医師の本音として、薬を減らせなくなります。

 医師には、薬の処方と説明をしてもらえばいいと患者が望むなら、その通りになるでしょう。医師は患者の治癒や健康の手助けをする役目。主役は患者自身です。健康のためにはどうすることが一番いいか、共に追求していきたいものです

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